先日、私の今いる地域の私立幼稚園の先生方が参加するプロジェクトに参加させていただきました。そこでの話は、今後こども園になるにあたって、乳児(0~2才)までを預かるようになり、その幅広い年齢の子どもたちを受けるために保育を改めて考えていくというプロジェクト内容でした。
乳児を預かるということは幼稚園にとっては未知の世界です。当然、それぞれの先生方は不安があり、それぞれの保育をどう組み立てていけば良いのかに迷いがあるように感じました。その中に私は入っているのですが、やはり私は保育園につとめる年数の方がおおかったので、それほど悩むことはなく、むしろ年齢層が増えることは子どもたちにとってメリットの方が多いのではないかと思う方です。
そんな中ではじまったプロジェクト。始めにあらかじめ事前にとった自園や他園のアンケートを見ることから始まります。1.「登園時間や在園時間の長短がことなる子どもたちの保育における良いこと・悪いこと」2.「3才未満児の保育になるに当たって良いこと・心配なこと」、3.「幼稚園教諭以外の職種、資格保持者との協働の良いところ・悪いところ」これらの三つのアンケートを自園で事前に実施し、それを持ち合い、統計をとったのを発表するというものでした。やはり幼稚園で働く職員の方がほとんどなので、正直な意見がかなり多くありました。
それぞれのアンケートにおいては、1つめの項目では「遊ぶ時間が増えることで保育に余裕がでる」「関わる時間が増えることでコミュニケーション能力がいまよりももっと深まる」という良い意見もあれば、「登園時間が長くなる子や短くなる子でカリキュラムが変わってくる。そのため、習熟度に差ができるのではないか」といったことや「長い時間子どもを預けるのはかわいそうではないか」といった意見もありました。
2つ目の項目では「異年齢の関わりが増えることで年長児は自分の成長を感じ、自覚するようになる」といったことや「様々な年代と関わり、コミュニケーションをとることが成長に繋がる」といったことがありました。短所では「職員が乳児への配慮ができるかが不安」「言葉が伝わらないのでコミュニケーションをどうとって良いかが分からない」というものから「おむつを替えるのができない」というものまでありました。それが正直な意見なのかもしれません。
3つめのことは「いろんな職種の人と出会うことで、自分の知識が深まる」ということや「専門的な人がいることで安心して判断できる」といったこと、短所で言えば「職種が違う分、意見の相違がありそう」「連携がうまくとれるか心配」「価値観が合わないのではないか」という不安もありました。
また、ある先生は「土曜日も出勤しなければいけないのは嫌だ」や「夏休みがなくなるのは嫌だ」といったお決まりの意見なんかもありました。
自分自身の感想としてはこういった意見は実に正直な所だと思います。また、幼稚園という文化だけではそういった考えになるのも仕方の無いことなのかもしれません。なにごとにおいても変化をすることにおいては不安がつきものなのも納得できることであると思います。しかし、まず、改めて「理念」や「理想」、「保育観」といったものをもう一度見直すことも必要なのかもしれないと思いました。以前、ドイツ研修に行かせていただいたときも、オランダ研修に行ったときにも、どちらでも、子どもたちをどういった目的で、社会に送り出すかという理想は一本化していたように思います。そして、保育というものに真正面から向き合っていたように思います。もちろん、国や社会の施策もあり、地位が確立されているからより集中できるという要素もあるのかもしれませんが、どこかで保育観というものの目的がはっきりしていた印象があります。
藤森先生のブログの「改革と存続」の中で「それぞれの組織には、不易ともいうべき理念があります。もちろん、それは絶対に変えてはいけないのではなく、その理念を掲げた思いを変えてはいけないのであって、その具体的行動は、時代によって変化をしていくものです。」という言葉がありました。
時代によって、保育も変わってくることがあって当然であると思います。しかし、その中心となる理念や理想は変えてはいけないということですが、今、その理念が揺らいでいることが多いように思います。そして、それらが園独自になっていたり、それぞれの働いている職員においてもバラバラであることも多いように思います。
この会で私はアンケートの中であった一人の意見を採り上げました。その人は「看護師と働くに当たって、保育観や理念を一緒にしていかなければいけない」という意見でした。しかし、「理念」という言葉をあげた人は185人のアンケートの中、この方しかいなかったです。改めて、そういった意見を持つことや発信していくこと、時代によって、「変わるべきもの」と「変化してはいけないこと」を見極めて、洞察していくことの大切さを感じました。
(投稿者 邨橋智樹)