循環

7月29日の生臥竜塾

今回は、塾長と出張に行った塾生が、現地で経験したこと、感じたことなどの報告会を行いました。

塾生・柿崎氏は、北海道出張へ同行し、旅先での行程や出来事などを教えてくれました。旭川に降り立ったのち、そこの食文化を体験したり、アイヌ文化を「アイヌ民族博物館」にて学ぶことができたそうです。アイヌ民族には、『イワクテ』という儀式があります。それは、役目を終えた「物」に宿る魂を神の国へ送る儀式です。もともと、「この世に存在するすべてのものに神が宿っている」という考えがあり、物を大事にするのがアイヌの精神文化です。古くなって穴の開いてしまった丸木舟を、細かく解体し、感謝の祈りをささげます。そして、解体した木材でまな板などを作り、新たな役割を与えます。こういった、何かを何かに変え、物や精神を『循環』させる文化を、アイヌ民族から感じます。

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また、30分ほど調理という立場から話す機会をもらい、自分が調理を目指すきっかけになった経験から「大人の声かけの大切さ」を感じたという話をしたそうです。塾長から声がかかった時、いつでも話せるような準備、また、そういった内容のストックを用意しておき、現場ならではの話を伝えられるようにしておくことで、塾長の役に立っていきたいと思ったと、話してくれました。

 

そして、私も鳥取出張に同行させて頂き、「科学する心を育てる」2004年度「ソニー幼児教育支援プログラム」において受賞された、赤碕保育園を見学しました。福田園長先生は、『レッジョを参考に実践するうちに、「環境を整えるだけでは足りない」「子どもは中心にあるべきだが、一方で子どもに任せているだけではうまくいかない」ということもわかってきた。保育する側の主体性の重要さに気づき、子どもの興味・関心をきっかけにして、いろいろな「色(提案)」を用意し、その子がつけたい「色」を選べるようにしてあげることが保育の役割だ。』と、保育雑誌に語っています。

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その内容通り、子どもたちの興味関心を掘り下げ、そこから何を学んでいるのか、また、学びを深める為に何が必要かを子どもたち自身で見つけることができるような声かけや、そういった意識を大切にしている様子が、職員の方々からも感じ取ることができました。そして、子どもたち興味関心から学びにいたるまでを記録し、保育園の様々な場所に掲示してありました。面白いと思ったのが、その記録をその日のうちに、関係している子どもの家庭に配布し、そのテーマが家庭ではどう発展したか、どう影響しているかを「家庭での様子」欄に記入して頂き、後日返却してもらって、それを、個人別発達記録「ポートフォリオ」として活用しているそうです。その『循環』が私には新鮮に映り、新しい見方を感じさせてもらいました。

また、鳥取名物「鳥取大砂丘」、そして「砂の美術館」にも立ち寄らせていただき、鳥取の「砂丘」という特徴を地域活性化のための『循環』へと活用している体験もさせて頂きました。

このように、様々な『循環』を感じた生臥竜塾となりました。

 

今回の食事メニューは、北海道名物「ジンギスカン」と、鳥取名物「砂丘らっきょう」、デザートに北海道のチーズケーキと、何とも豪華でした。塾長、いつもありがとうございます!

(報告者 小松崎高司)

北海道名物 松尾ジンギスカン

北海道名物 松尾ジンギスカン

食事メニュー

食事メニュー

チーズケーキと鳥取土産(砂丘の砂で作られたモアイ像)

チーズケーキと砂丘の砂で作られたモアイ

鳥取大砂丘

鳥取大砂丘

砂の美術館

砂の美術館

暗闇

7月22日の生臥竜塾

皆さんは、「元気がいい」という言葉から、いったいどんな子どもの姿を想像しますか?

日本では、よく“大声で走り回っている姿”を見ると「元気がいい」と感じる傾向が少なくないように、“落ち着いている”ということは、物音せずにシーンとしている姿であるように捉えてしまっています。しかし、果たしてそれは本当だろうかというのが、今回のテーマです。

ドイツでは、散歩に出かける前にあることをするそうです。日本では、“よーし、これからたくさん歩くから元気を出して頑張ろう!”といって、子どもたちを奮起させ、気分を高めさせることが多いですが、ドイツでは、ロウソクを灯し、その灯りを見つめながら、エネルギーを自分の中に向かわせた後、ゆっくりと出発するそうです。そうしないと、予期せぬケガにつながってしまうからだそうです。

日本では、子どもが気持ちを発散させる場を用意しても、そのエネルギーを自分の中に向かわせ、自らでそのエネルギーを残すといった練習はなかなかしないとのこと。100%の力と、70%の力。どちらが自分で制御しやすいかといったら、当然、70%の方であると思います。そのエネルギーの調節が、幼いころから習慣的に自分の力で行えている環境下で育つことによって、周囲がケガを防ぐのではなく、内なるエネルギーのコントロール力で、自分で行動を制御できるようになっていくということでした。

元気がいいということは、あくまで自分で選んだ活動に対して集中して取り組んでいる姿ということであり、自分のエネルギーを調整して活動できている姿であるということです。子どもたちは、1日をどんなテンションですごしているでしょうか。1日中、テンションが高いまま過ごしてしまっていないか、見直さなくてはなりません。それに有効なのが「集中」、そして「暗闇」だそうです。

そして、暗闇から人の能力についての話がありました。

健常者が真っ暗闇に行くと、視覚という5感のひとつが機能しなくなりますが、視覚障がい者は、真っ暗闇でも「景色」が見えることもあるそうです。つまり、第6感で、ものを見ているということになります。よく、障がい者の気持ちを理解しようとして疑似体験する催しもありますが、その趣旨はそうではなく、「失っているものを取り戻そう」といった、人間が持つ能力に気づくことでもあるとのこと。同時に“障がいってすごく優れている”という認識にもつながることでもある。それが、「目以外のもので、何かを見たことがありますか?」という問いかけで始まる、ソーシャルエンターテイメント『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』という試みでもあります。(これについては、塾長の「臥竜塾」ブログの2010年12月4、5日に詳しく書かれてありますので、どうぞそちらをご覧下さい。)その第6感を、もともと携えているのが「赤ちゃん」でもあり、赤ちゃんは5感が未熟な分だけ、それ以外の能力が働く。その能力は、5感ができるようになってから次第に失っていってしまうという話もありました。

5(感)−1(感)=4(感) が通常ではあるものの

5(感)−1(感)=6(感) にもなり得るという内容でした。

 

今回のメニューは、いよいよ夏も本番!ということもあり、「冷やし中華」を作りました。また、塾長が頂いた「讃岐うどん」も一緒にごちそうになりました。コシが強くて食べ応えがあり、非常に美味しかったです。やはり、熱い日には、冷たい麺が進みますね!今回も、みなでおいしく頂きました!

(報告者 小松崎高司)

冷やし中華と讃岐うどんと枝豆

冷やし中華と讃岐うどんと枝豆

正義の見方

7月15日の生臥竜塾

 

今回の塾は、塾長が1週間ほど各地へ出張に出かけていたということもあり、その場所で起きた出来事や印象に残った話などをしてくれました。各地に行き、様々な人との話の中で、多くの見方を知ることができたと。

その中でも、人によって「正義」という見方も違うのではという話がありました。

 

【正義】

1、人の道にかなっていて正しいこと。

2、正しい意義。また、正しい解釈。

3、人間の社会行動の評価基準で、その違反に対し厳格な制裁を伴う規範。

 

自分の視点で物事を見ると、当然自分が「正義」であるかのように映りますが、相手にとっては、こちら(自分)が「悪」や「敵」に映っている場合もあります。では、正義とは何なのか。自分以外はすべて悪なのか。“アンパンマン”でおなじみのやなせたかし氏は「正義ものでヒーローが悪者をやっつけるという話が多いが、相手側からすれば、相手の正義がある。それが嫌なので、誰にとってもの敵は、“飢え”であろういうことで、その飢えを救うヒーローとしてアンパンマンを登場させた」と語っていたそうです。

 

あくまでも“悪者を作らない”ことが重要であり、それを自然に子どもたちの中でやっているのが『ピーステーブル』であるということ。子どもたちは、自分たちなりの価値観や意見を伝えあい、子ども特有な「曖昧さ」によって見事問題を解決させているのに対し、そこに大人が介入することで「正義」と「悪」を決めたがってしまう。もちろん、相手に手を出すことはいけないが、手を出した方にも「正義」はあるかもしれない。

 

考え方は、ついつい一方的になってしまいがちであるということ。自分にとっての敵を排除するのではなく、多様性から得られる数多くの「正義」に触れ、そこから自分の「正義」を確立していき、その中での共通する正義に重点を置く必要性を感じました。

まさに、「正義の味方」は「正義の見方」を提唱しています。

 

今回の食事メニューは、塾長が名古屋で買ってきてくれた「みそだれ」を使用した『みそカツ』と、なすと玉ねぎのみそ汁です。思っていたよりもさらっとしたソースで、カツによく染みて非常に美味しかったです。ごちそうさまでした!

(報告者 小松崎高司)

味噌カツ・なすと玉ねぎのみそ汁

味噌カツ・なすと玉ねぎのみそ汁

矢場とん「みそだれ」

矢場とん「みそだれ」

「ひつまぶし柿の種」 「手羽先プリッツ」

「ひつまぶし柿の種」
「手羽先プリッツ」

ネーミングがマニュアル

7月8日の生臥竜塾

 

今回は、ある大学教授が新宿せいが保育園を訪れて、「見守る保育を、どのように職員に浸透させているか」を観察し、そこでどう感じたかのお話を塾長より報告して頂きました。

 

まず、ある職員が、子どもが甘え泣きをしていると理解し、少々様子を見ていた場面がありました。最終的に、その甘えをしっかりと受容して抱っこをするのですが、その次の日の同じような場面では、昨日よりも少し時間をおいてから受容していたと感じたそうです。昨日よりも今日と、微妙に対応を変えられるのは、ネーミングが「見守る保育」であるからではないか。つまり、保育者が何か行動に移す際に「今から行うことは見守る保育なのだろうか」と考え、自分としての間合いを見て待つことによって“んっ?”とワンクッションをおくことができ、原点に立ち返ることができていると。

また、そのように立ち返ることで、方法は違ってくるが誰がやっても目指すものが同じ「見守る保育」になっていき、結果、保育が統一してくるという印象を受けたそうです。それだけではなく、「見守る保育」という名前によって、他の人とも有意義な議論を繰り広げることができ、行動に移す時も、直接ではなく環境を通して用意するようにもなっているというのです。

そして、行動に移す時に見る物がマニュアルなら、新宿せいが保育園では「見守る保育」というネーミング自体が、マニュアルそのものであるということを塾長も仰っていました。

 

何かに名前を付ける時は、その名前がその後のマニュアルになり、人を原点へ立ち返らせるような言葉で構成すると良いということがうかがえましたし、そのネーミングが保育へ統一性を運んでくるという感覚を持ったことがありませんでしたが、よくよく考えてみると、やはり最終的な判断はそこから生み出される答えからのような気がします。以前からあったものなのですが、不思議と新鮮な気持ちにもなった報告でした。

 

そして、今回の食事メニューは、塾長がお土産で買ってきてくれた、絡め唐揚げ「華からっと」を中心に、チンジャオロースー、野菜スティック、カブのみそ汁でした。そしてそして、今回は日曜に誕生日を向かえた塾頭山下氏のお祝いもしました。「三十にして立つ」と繰り返していました。そんな“立っていく”塾頭の姿に、振り落とされないようしがみついていくのが塾生の努めでもあります。

(報告者 小松崎高司)

絡み唐揚げ「華からっと」

絡み唐揚げ「華からっと」

メニュー

メニュー

塾頭の好物「カステラ」でお祝い

塾頭の好物「カステラ」でお祝い

理想像

7月1日(火)の生臥竜塾

今回の生臥竜塾は、塾長と臥竜塾生の二人がドイツ視察へ行き、臥竜塾生の一人がプライベートでハワイへ行ってきたということで、実にグローバルな報告会となりました。今回のドイツ視察で、塾生全員がドイツへ行ったことになります。

2007年 第5回目 西田

2009年 第7回目 山下

2010年 第8回目 邨橋

2011年 第9回目 柿崎

2012年 第10回目 本多

2013年 第11回目 小松崎

2014年 第12回目 柿崎・若林

この数字を見ると、改めてドイツ視察の歴史を感じます。初めの方にいった人から、最近行った人までの話を聞き、ドイツの“環境の軸となる部分は何も変わっていない”といった話が出ました。「ぶれないというよりも、日本だけが特殊すぎる」という意見もありました。それは、アメリカの保育環境の写真も見て、ドイツ環境と似たものを感じたからです。その“特殊”が、日本の良い面を活かした独自性として捉えることができるうようになればと思います。

 

また、その報告の中でも、日本からの移動で長時間飛行機の中にいるので、各々過ごし方は異なりますが、行きや帰りの機内で見た映画の話題でも盛り上がりました。「そして父になる」「ミケランジェロプロジェクト」などあがりましたが、塾長が懐かしい映画を見つけ、鑑賞したのは「メリーポピンズ」という映画です。

この映画は、チム・チム・チェリーの歌でおなじみのミュージカル映画で、メリーポピンズが乳母として子どもの家庭に来るという内容です。この時のきっかけには、親からみた子どもに対する接し方の理想像と、子どもからみた理想像とのギャップが表れているそうです。せりふの訳から見てみましょう。

子どもの保護者が「乳母を選ぶのは大仕事だ。洞察力と人を見る目が必要だ。」ということで新聞広告を出すことになります。「募集 乳母・しっかり者でまじめな女性。イギリスの乳母は将軍。国の未来は彼女ら次第。頼もしい若者を育てるのは、乳母のきびしい手。イギリスの銀行は精密機械。家庭もそうあるべきだ。伝統、規律、そして規則が大切だ。でないと、混乱、破滅、すべてがめちゃくちゃだ。」

これに対して子どもたちが書いた新聞広告は、「かわいい二人の子の乳母を求む。申し込む資格は、気立てが明るく、ゲームができて、親切で、気がきいて、やさしく、きれい。散歩の時はいつも、歌とお菓子。いじわるしないで。ひまし油なんか飲ませない。ママほどかわいがって。あんまりしからなければ、私たちもおとなしくします。」

 

理想像に限ったことではなく、子どもたちは、このようなギャップを日々感じているかもしれないのですね。子どもの声を素直に受けとめる社会を作らなければ、その差は埋まらないのかもしれないと感じました。

 

そして、今回の食事は二部構成でした。一部目は、塾長からドイツ名物である「白ウィンナー」とろうそくのお土産を灯して、ドイツの気分を味わい白ウィンナーを食しました。みんな、ドイツで白ウィンナーを食べたことがあるということもあり、“懐かしさ”や“絶品さ”が蘇ってきたようです。ごちそうさまでした!

二部目は、塾生で作った海鮮丼となめこのみそ汁、ほうれん草の胡麻和えでした。そして、デザートにはメロン!このようなおいしい食事を、みんなで楽しく食べられる。なんて幸せなことでしょう。

一部の様子

一部の様子

ドイツのろうそく

塾長からのお土産 ドイツのろうそく

白ウィンナー

白ウィンナー

海鮮丼・みそ汁・ほうれん草の胡麻和え

海鮮丼・みそ汁・ほうれん草の胡麻和え

ハワイのお土産 パイナップルチョコレート

ハワイのお土産
パイナップルチョコレート