「いやぁ〜世の中にこんな楽しいことがあるのかと。仕事って、イメージ的にこう、ちょっとしんどいことをして働いて、変わりに報酬を頂くっていうイメージがあるじゃないですか。だから俺あんま嫌なことしてへんよなぁ。だって僕、竹割ってりゃ、幸せなんですから。」
この言葉に惹かれて、休日に伝統工芸「別府竹細工」のワークショップに行ってきました。講師は、大学卒業後に竹細工職人を志して大分県・別府にある竹細工の訓練学校で学び、伝統工芸士の方へ弟子入りを経て独立した、別府竹細工職人の清水貴之氏です。最初の言葉は、清水氏がCSのディスカバリーチャンネル『明日への扉』の番組で言われた言葉です。実際にお会いした印象は、自然体で佇む姿から“飾らずゆったりと”といった雰囲気を感じて、時間の経過もあっと言う間でした。
まず、竹細工には地道な竹ひご作りから始まります。竹も何度も割って徐々に細くしていきます。次に表面をはぎます。竹細工で使用するのは、丈夫でつやのある皮の部分のみ。何回にも分けて薄くはいで、材料を作っていくのです。そして、できた竹ひごを整えていきます。巾を揃える「巾とり」、竹の角をとる「面取り」。そんな地道な作業を清水氏はこう言っています。
「正直、初めたての頃は、面取りの重要性をよくわかってなかった。単調ですし。今は、面取りっていうのは一番かごがきれいに見える大事なところじゃないかなって思う。」
面取りの角度ひとつで、柔らかさや凛々しさなど、作品の印象が変わるそうです。最後に裏すき銑という道具で厚さを揃えると、ようやく編む材料が完成となります。材料を作るまでに、こんなにも手間がかかっていることが理解できるように、この作業は、竹細工全ての行程の7割にも及ぶと言っても過言ではないそうです。
以前、竹細工の作品を店頭で見る機会はありましたが、その価格に正直驚いた記憶があります。しかし、この作業工程を知ると納得します。また、清水氏は震災の時、竹と鉈さえあれば、生活に必要な道具は全て作れるなと思ったという話をしてくれました。箸やナイフ、皿などを始めとする食器も、そして籠も、全て竹だけで作れるので、自分は生きていけると。そう考えると、究極のエコかもしれませんね。自分の中での竹細工の魅力が、ますます上がっていきます。
(報告者 小松崎高司)