まず実習の良いところに、その日の「実習目標」を書くことがあると思います。その日、自分はどんなところに注目して、そこから何を感じて、どう理解したのかを考えることで、これまで生きてきた過程において、数多くしてきた自分独自の考察の仕方を把握することでもあるように、目標に応じた「振り返り」作業をします。「実習目標」は、一種の“テーマ”でもあり、目標を絞ってミクロの世界に着目することで、学びを深いものへと変えていく傾向があると感じています。また、小さな世界を深く理解したと感じることで自信につながり、知っていこうとする楽しみを覚え、次への学ぶ意欲にもつながる効果があると感じます。大学の実習担当の先生から「実習目標はより具体的な方がよい」と言われていたことを思い出しました。それには、きっとこのような意図があったのでしょうね。
『子どもたちと表情豊かに接し、介入のし過ぎに注意する。』
これが、実習1日目(0歳児クラス)に入ったときの実習目標です。この目標を決めたからでしょう。「実習生の活動」欄には、“子どもに微笑みかける”とか“子どもが玩具を持って近寄ってきてくれたので笑顔で応える”などの記入がされていました。また、“介入”について『本日のまとめ、反省、考察、感想等』の欄には、「実際、現場で体験してみると、どうしても子ども同士のトラブルには口をはさんでしまっていたと思います。また、その時の声かけもその子を理解したうえでの声掛けにはほど遠く、介入するかしないかは日々の子どもの様子をよく見ておかないと判断できないものだと学びました。」と書かれてあります。そして、感想等として『今日感じたキーワードは“ひとりひとり”です。時間に追われることなく、子どもひとりひとりに合ったペースで保育している様子がうかがえました。また、保育者が「◯◯くんはここまでできるから、次はあれに挑戦させてあげよう」と、新しい環境を用意し、それが“ひとりひとりの把握”につながっていくのだなと思いました。』と記入されていました。
介入するタイミング、仕方、言葉掛け等は、子どもの発達を理解していないと難しく、日々子どもたちと生活を共にしているからこそできることだと学んだようです。そう考えると、新しいクラスに変わったときの保育士と実習生の存在は、子どもにとってはほとんど変わらないようにも感じます。発達を把握していくノウハウやスピードはもちろん違いますが、保育士も、毎日子ども理解に努めているように、実習生だからといって「何もできない存在」として見るのは違いますね。「子どもを一番新鮮に感じることができる」存在として関わっていきたいと思いました。
そして、この実習日誌を読んで客観的に思うことは「気負いすぎている」ということです。よく考えてみると、これが実習の1日目です。もっと、子どもという存在を不思議がったり、一緒に楽しんだりするという姿勢が大切だよと、過去の自分にアドバイスをしたいです。
1日目の日誌の最後にある『実習指導者所見』欄には、「緊張されていたそうですが、子どもたちに対する笑顔がよかったと感じます。」と書かれていました。実習生にとっては、先生方のこのような言葉が何よりもの救いになります。それはきっと「目標」にしていたことが評価されていたことも大きかったのだと思います。
(報告者 小松崎高司)
自分の実習日誌を探して、読み返してみたくなりました。当時の気持ちはなんとなく覚えていても実際に何を書いていたのか、何を思っていたのかは書いたものを見るのが一番ですね。実習日誌を書くことでその日の子どもの姿、自分の関わり方を振り返る時間になりますね。また、書く作業もそうですが、そんな1日の様子を保育士さんと一緒に振り返って、疑問を話せるような機会もまた大切なのかもしれません。なぜ、どうしてということを気軽に話し合える雰囲気を作り出していきたいですし、そうすることで実習生もまた日々の中での疑問を感じとりやすくなるのかもしれませんね。実習生に対する関わり方を考える時間になりました。
現在の小松崎先生は兎にも角にも表情豊かで、時に豊か過ぎる程で中にはその多彩な表情(いわゆる『変顔』)を怖いと感じる子もいる程です。当時の小松崎先生に僕は、『すごく表情豊かな先生になれるから安心してね』とアドバイスをしてあげたいなと思いました。
しかし、介入のしすぎに注意するなど、素晴らしい観点を学生時代からもっていらっしゃたのですね。介入とはまた違うのですが、僕は昔勤めていた保育園で、泣いている子がかわいそうで抱っこをしたら『抱っこは保育じゃない』『あなたは私の保育を奪った』など言われた記憶があります。今となるとその考え方こそ保育から遠いように感じるのですが、保育は何より人に自分の価値観を押し付けるものではないと思います。〝ひとりひとり〟という言葉にも表れているように、個人を認め合うものであると思うのです。役割やその人のもつ力を信じるという土台の上に成り立つものであると思います。
子どもに対しても同じで、だからこそ介入しすぎないで、その子の発達を知って、その子がどこまでやれるのかを把握しながら一緒に進んでいくものであると思います。
実習生を〝「子どもを一番新鮮に感じることができる」存在〟と捉える見方は最高ですね。そのような環境でこそ、人は豊かに成長していけるのではないかと思います。