乗せようと思ったカップは落ちます。
それを今度はどうするのか。
カップを見たり、写真右当時約12ヶ月児(ピンク色の服を着ているので以下ピンクちゃん)の表情を見たりする写真左当時約7ヶ月児(白い服を着ているので以下白ちゃん)です。
床に置かれたカップ。
手渡されたのかと思い、一瞬、白ちゃんの手が伸びますが、
ピンクちゃんはそれを持ってどこかへ行ってしまいます。
「え?」というような表情、目で追う白ちゃん。
ピンクちゃんはカップを、
放り投げて、
奥のクッションへ
その身を預けます。
取りに行ってくれそうな白ちゃん。
それを期待して見ていたのですが、
戻ってきて、
戯れるようなピンクちゃんに視線は奪われ、
カップの存在は薄れてしまったかのように見えました。
しかし、数秒間、カップを媒介にしない二人のやりとりの後、
いよいよ白ちゃんがカップへ向かいます。
ピンクちゃんの右足、ペットボトルの玩具の、
ノールックパス。
それにも一度興味は移ります。
が、
いよいよカップへ行くだろうと思ったその時、
あれ?
動画を撮っていた手元が強い力によって引っ張られました。それによって、この動画はラストを迎えます。
それは、右手でカメラ、左手で哺乳瓶補助という形で、撮影中、撮影者の膝の上でミルクを飲んでいた当時約9ヶ月児からのものでした。
13年目に入られました塾長藤森先生が毎日欠かさず更新されています『臥竜塾』ブログ2017年10月11日『目標理解』の中でこう書かれています。(太字をクリックすると藤森先生のブログ『臥竜塾』にとび、この回のブログの全文を読むことができます。)
「6ヶ月頃に見られる重要な発達的変化は、他者の行動が目標志向的であることの理解だそうです。心の理論研究において、目標志向性の理解は、他者の行為理解の最も基礎的な要素だと考えられ、近年は研究が増加しているそうです。人間の複雑な行動は、目標志向的です。漫然となされるのではなく、何か目標に対して働きかけていると言われています。他者が手を伸ばしている様子を見たときに、その先に時計があるとしたら、私たちはその人が時計に対して働きかけているなと思います。このように私たちにとって重要なのは、行為そのものではなく、行為の先にある目標であると言われています。」
自分で哺乳瓶を持って飲めるようになった9ヶ月児に安心してカメラを回していましたが、いよいよその注目を自分へと思う声なき声か、手元を引っ張ったその行為によって、計2分12秒もの間、撮影者の目標に対して理解を示してくれていたのではないか、という推測が立つように思えるのは主観的な見方でしょうか。
どのようなドラマが生まれるかわからないものです。白ちゃんがカップで遊ぶ様子は撮影できなかったものの、予測通りにいかない子どもたちの面白さと、様々な視点で見ることの大切さに気付かされる思いがしたこの度の出来事でした。
(報告者 加藤恭平)