あとはできる

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おやつで出てきたパックジュースには、透明なビニールに入れられた伸縮ストローが斜めに接着されています。そのビニールをパックジュースから剥がし、普段通りストローを取り出そうとしたのはTちゃん(年少)。しかし、もう一つのおやつであるドーナツを先に食べてしまったことでテカテカの油が両手を覆い、なかなかビニールからストローを取り出せずにいました。

周囲の子どもたちは、その様子を見ているのかは分かりませんが、特に声をかけることもなく、たわいもない会話に花を咲かせています。そこで、Tちゃんは職員のもとにやってきて「これやって」と言いました。職員は「誰かできるお友だちにお願いしてみて」と返します。Tちゃんは自分の席に戻り、そのテーブルに座っていたK君(年長)に「これやってー。」とお願いすると、「うん。」とK君。受け取ったビニールはヌメヌメしていたり、Tちゃんのチャレンジの証とばかりに中のストローがつぶれていたりしているためか、K君も取り出しづらそうでした。テーブルにトントンと叩きつけたり、親指で下から押し上げたりしてやっと「はい、できた。」と言って渡したそのストローは、ビニールから1㎝ほどしか頭の出ていないストローでした。

Tちゃんはそれを受け取ると、少ししか出ていないストローを眺めながら自分の席に戻り、1㎝ほど出ている部分を掴んで力一杯引き上げると、ビニールからストローを取り出すことができ、ジュースを口にすることができました。私は、しばらくした後に「K君、どうして最後まで取り出してあげなかったの?」と聞きました。するとK君はこう言いました。

「あとはできるとおもって。」

子どもにとっては何の特別感のない日常には、子ども同士で育ち合っている氷山の一角にすぎない、そんな瞬間の連続で溢れているのだろうなぁと感じました。

空いている窓から東風が吹き抜けていく清々しい午後でした。

(報告者 小松崎高司)

あとはできる」への1件のフィードバック

  1. 子ども同士でも見守っているのですね。そのような瞬間は大人が気づかないだけで、何度も起きているのでしょうね。それにしても、小松崎先生の報告は詩のようです。

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