ちょっと変わった職員が考えるリーダー論3 〝背中は語る〟

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人はその背中に憧れて、見守る保育のドアを叩く

初めてその先生と出会ったのは、藤森先生の名著『0・1・2歳の「保育」』の中でした。正確に言うと実際にお会いしたわけでなく、その本を読んで勝手に憧れていただけなのですが(笑)その、写真がこちらです。

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掻き鳴らすギター、テーブルに乗った足、集中を通り越して熱狂しているようにも、呆然としているようにもとれる子ども達。今にも音が聴こえてきそうな臨場感あるこの写真の男性に一目見て恋をしました。

その先生もまた、新宿せいが保育園の前身である『せいがの森保育園』から見守る保育を支える重鎮の一人です。新宿せいが保育園を最前線で牽引する男性保育士の筆頭であります。先日の本多先生の報告にも登場されています。(http://namagaryujuku.com/?activity=歩き方)

藤森先生が10年間毎日欠かさず更新されているブログ『臥竜塾』の2013年3月8日『ユーモア』(http://www.caguya.co.jp/blog_hoiku/archives/2013/03/ユーモア.html)の中で、〝タイミングの良いジョークや陽気な笑いは、創造性を刺激し、コミュニケーションの端緒を開き、一体感や信頼感を強め、仕事をより楽しくしてくれる〟と書かれています。

憧れの人と同じ職場にいるというのは、例えばがんばってバンドで売れて、憧れていたミュージシャンの方々と紅白歌合戦に出るような、そんな感覚です。気さくなその先生のお人柄に調子づいた僕に、ついにこの写真のことを話す機会が訪れました。種明かしのようで嬉しかったのですが、聞くと、「カメラを向けられたから、ついね(笑)」とのことで(笑)これこそ上記されているユーモアそのもの。また、それを著書の中に掲載された藤森先生の度量、意図を感じさせます。

その先生の放つ光は、お集まりの時間ににわかに輝きを増します。その先生の読む紙芝居、絵本の面白さに子ども達はもちろんのこと、職員も、ついには保護者までも集まってしまうのです。いつの日かは、気付いたらそこにいた人達はとっくに就業時間を過ぎていました。ザリガニなどの生き物を題材にした写真の紙芝居や、部屋に置いてあるいつもの絵本がその先生の力によって、命が吹き込まれるかのようです。また、ラジカセ、マラカス、カホン、ギター、そして、自転車の鈴(笑)など、挙げればキリがないのですが、それら全てが先生の武器です。

また、2013年3月7日『雰囲気』の中で〞リーダーは、みんなから注目されているために、他の人以上に、その表情が人に与えるインパクトは、わずかな表現でも伝わりやすいのです。ですから、大げさに自分をアピールする必要はありませんし、目立つ表現をする必要はなく、自分に率直に気持ちを表現すればいいのです。〟

その先生の影響で、お集まりの時間に何か面白いことをしたいという気持ちが強くなっていました。積極的に自分からそういう機会を得ようとガツガツしていた時に、「今日の遅番(お集まりの主導をとる先生)って加藤先生なの?」と一言。たった一言いただき、自分が周囲の先生からそのような機会を奪っていたかもわからないことを、そっと教えていただきました。

「もう加藤くんも教える立場だからね。」

言葉としては、なんと少ない言葉なのですが、とても胸に響きました。その先生を始め多くの先生に見守られて自分があることを確認させていただいたような、また、自分を認めてもらえているような、そんな気持ちになりました。

2013年3月8日『ユーモア』のブログはこのような言葉で締めくくられ、次のテーマへと、発信されています。〝人は、それぞれ経験も、育った環境も違いますので、考え方も違います。考え方が違う人と同じ目標にむかって一緒に仕事をしなければなりません。そのために、その違いを受け入れる寛容さ、その違いまでも自分の中に取り込む度量の広さが必要になります。〟

相手を傷つけることなく、相手の意欲を削ぐことなく、相手に気付かせてあげる。僕も新しく入った人達を迎えて、実感として感じていることがあります。その先生が言って下さったそれは度量ある人の言葉であり、藤森先生が保育を〝保育道〟であると仰るように、保育とは人を高めていく仕事であるということを、改めて感じる出来事でした。

僕は、この背中を追いかけていこうと思います。いつの日かその先生のように、憧れられる存在を目指して。

(報告者 加藤恭平)P3250052

ちょっと変わった職員が考えるリーダー論3 〝背中は語る〟」への4件のフィードバック

  1. 近くに憧れの人を感じながら働くことができるというのはとても幸せなことですね!読み聞かせの様子や「ラジカセ、マラカス、カホン、ギター、そして、自転車の鈴(笑)など、挙げればキリがないのですが、それら全てが先生の武器です」とあり、その先生の現場でのお姿を私もぜひ感じてみたいという思いになりました。自分もそのような引き出しがあればいいのですが、まだまだです。多くを語らなくてもその先生の一言、姿がきっと周りの先生方にとっては冷静に自分を見つめなおしたり、保育のヒントになったりするのかなと想像しました。私もちょっとやり過ぎてしまうところがあるので、加藤さんの気づきにはとても共感しました。

  2. ガツガツしていたことを一掃されたようですが、子どもたちのために毎週のように図書館に通い、楽しい絵本・面白い絵本・ナンセンスな絵本などを何冊も選んで、借りてきては読んであげる、そんな行動ができる加藤先生も私は好きです。「最近、蟻に興味を持ってるから蟻が出てくる絵本にしよう」「友だちとの関わりが楽しそうだから、その関わりが潤うような絵本を選ぼう」などと考えながら選ぶのは、立派な週案でもあり、環境を通した保育でもあると思います。私もガツガツさには気をつけていきたいと思います。笑

    • k.takaさん!
      そんな加藤さんの姿があるのですね…!ちょっと感動してしまいました。絵本を選んでいる加藤さんの姿を想像して、かっこいい!と同時になんだかウルっときてしまいそうにもなりました。

  3. もりぐちさんへ
    コメントありがとうございます!今度新宿せいがに来た時にぜひ見てほしいです。生き物の紙芝居の時は本当すごかったです(笑)自分の周囲の状況も見えて初めてチーム保育ですものね。毎日が勉強ですね。
    k.takaさんへ
    コメントありがとうございます!絵本が大好きな僕です。その姿勢も今一緒に組ませていただいている大ベテランの先生から学んだもので、その先生も自分がリーダーの時には、決まって地元の図書館から借りてきてと準備をして一週間に臨まれています。20年近く、そういったことを地道に重ねられてきたのだと思うと、本当すごいなぁと思います。

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