もっと大きなはずの自分を探す 終わりなき旅

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〝友だちの存在が、気をそらす対象になる〟

12年目に入られました藤森先生が毎日欠かさず更新されています『臥竜塾』ブログ2016年3月21日『ホットからクール』の中にこう書かれています。(太字をクリックすると藤森先生のブログ『臥竜塾』にとび、この回のブログの全文を読むことができます。)

集団の持つ力。子ども集団の中で育まれていくものを垣間見たようなこの度の出来事について、報告します。

黄緑色の服の子は腕を組んで、悩ましい表情です。

黄緑色の服の子は腕を組んで、悩ましい表情です。

この写真、一見3人の男の子達(3人ともすいすい組(5歳児クラス))が青い服の男の子(わいわい組(3歳児クラス)以下〝青くん〟)を問い詰めている写真のようにも見えますが(笑)

実はそうではありません。引きで撮ると、右下にもう一人。

実はそうではありません。引きで撮ると、右下にもう一人。

ふてくされた様子で寝転んでいる青いボーダーの服の子はわいわい組(3歳児クラス以下〝ボーダーくん〟)の男の子。実は、泣いている青くんと口論になり、その仲裁にすいすい組(5歳児クラス)の子達が集まってきてくれた場面です。

この写真に至るまでに、ストーリーがあります。

青くんとボーダーくんはいつも仲良しの二人組。ブロックゾーンで二人で家をつくって遊んでいたところ、青くんの思うようにボーダーくんがブロックを組み立ててくれなかった為に、青くんが怒って泣き出してしまいました。

二人のこのようなやりとりはある意味では日常茶飯事(?笑)のようなもので、傍で見守っていました。この日は上手く二人で解決に至らない様子で、青くんの主張は理解できた為に、ではボーダーくんの気持ちは?と聞いてみることに。

ボーダーくんとしては「青くんはブロックが壊れる度に僕のせいにする。一緒に遊びたいけど、僕のせいにするからそれは嫌だ。」とのこと。

その旨を青くんに伝えてみました。ですが、話の途中で「嫌だ、もう遊びたくない。」となり、最後まで聞いてくれません。

その様子を通りがかりに見て、「どうしたの?」と来てくれたのが、最初の写真で腕を組む黄緑色の男の子(すいすい組(5歳児クラス)以下〝黄緑くん〟)でした。

そこで、黄緑くんに事のあらましを伝え、二人の仲裁に入ってほしいことを要請。承諾してくれ、青くんに話しかけに行ってくれました。

最初の内は僕が話しかけていた時と同じ反応を見せていた青くんですが、

その様子を見て1人、また1人と輪の中に増えるにつれ、態度が変わっていきました。

その様子を見て1人、また1人と輪の中に増えるにつれ、態度が変わっていきました。

 「ボーダーくんが遊んでくれない。ボーダーくんなんてもう嫌い。」と言っていた青くんでしたが、黄緑くんに「どうしたの?」「なんで?」と問われる内に、「だって…」と言葉に詰まるようになっていきました。

そして、次の瞬間、その輪を抜け、スタスタと歩いて行ってしまいました。

その様子を、少し横で見つめていたボーダーくんが追います。そして、すいすい組(5歳児クラス)の男の子達は、その後を追いません。もう役割を終えたことを本能的に察知したかのようです。

『臥竜塾』ブログ2016年3月21日『ホットからクール』の中には、こうも書かれています。

〝マシュマロ実験で、うまく先延ばしが出来る子どもは、魅力的なお菓子とベルから戦略的に気をそらす方法を思いつきました。それは、彼らが、様々な方法を使って自らを冷却することに成功したのです。彼らは、また、誘惑するもののクールで抽象的で、情報を提供してくれる側面に意識を集中し、想像力を働かせ、ホットな特徴を避けたり、変えたりして冷却しました。お菓子を手に入れるために待つのに、彼らが使った多種多様な認知的スキルは、ずっと後年、友だちと映画に出かける代わりにハイスクールの試験のために勉強したり、人生で彼らを待ち受けるほかの無数の待ったなしの誘惑に逆らったりするのに必要とされるスキルのプロトタイプであるとミシェルは考えています。

ここで、私は少し疑問を持ちます。多分それは、ミシェルによって、考察を進める中で解明されることでしょうが、現時点ではその説明に、実際の子どもたちを見ていて「そうかな?」と思うところがあります。それは、ホットな情動をクールにする方法として、気をそらすことが中心に語られていますが、コメントにもありましたが、私たち集団で子どもたちを保育している現場として、クールダウンするために、他の子どもの存在、子ども集団の力が影響することが大きいような気がします。(中略)

もし、マシュマロ実験の時に、部屋に同年齢の複数の子どもたちを残して立ち去ったときに、どのように子ども同士が影響し合って欲求を先延ばすかを知りたい気がします。また、もし、異年齢の子どもたちが部屋にいたときには、どのような行動を起こすかを知りたい気もします。これは、園で実験が出来るかもしれませんね。もしかしたら、友だちの存在が、気をそらす対象になるのかもしれませんし、励まし合うのかもしれませんし、競い合うこともあるかもしれません。一人の子どもの観察から得る結果よりも、より複雑な条件が絡み合うことでしょう。しかし、現実の社会では、きっとその方が多くの場面で起きることのような気がするのです。〟

二言三言、言葉を交わした青くんとボーダーくん。その声は聞き取れませんでしたが、互いに慰め合っているように見えました。

その数分後、

またブロックゾーンで楽しそうに遊び始める二人。

またブロックゾーンで楽しそうに遊び始める二人。

〝私たち集団で子どもたちを保育している現場として、クールダウンするために、他の子どもの存在、子ども集団の力が影響することが大きいような気がします。〟

最初に青くんに声をかけた時、今日に至るまでに築かれた大人との信頼関係がこの場面においては良い影響とならず、気持ちを切り替えるきっかけというよりも、むしろ助長させてしまったようにも思えます。ところが、すいすい組(5歳児クラス)の男の子達が介入してくれてからの青くんの態度というのは、藤森先生のブログに書かれていた通りのものではないでしょうか。

〝友だちの存在が、気をそらす対象になる〟

集団の持つ力。子ども集団の中で育まれていくものを垣間見たようなこの度の出来事でした。

(報告者 加藤恭平)

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