先日、にこにこ組(2歳児クラス)から、仲良しだったお友達が一人転園をしてしまいました。
寂しい気持ちも束の間、12月1日から新しいお友達がクラスにやってきています。
慣らし保育初日からどんどん遊びの中に入っていける子で、もう既に違和感なくそこにいますね(笑)
これこそ対人知性の一つであると思います。
ここで、もうお馴染みではありますが、初めて読まれる方に〝対人知性〟について紹介させていただきます。
- 対人知性とは、他人を理解する能力をいう。この人の動機は何か、あの人はどう動くだろうか、皆と協調して動くにはどうすればいいのか、といったことを理解する能力だ。
- 対人知性の本質は、「他人の気分、気質、動機、欲求を選別し、それに適切に対応する能力」である
子ども達にこの力が育まれていることを、新入園児の子が教えてくれるような思いがしました。
そして、展開されていきます。
赤井くんに、優しく牽制する黄色くんです(笑)それでも赤井くんは電車の玩具が欲しくて仕方がない様子。
青井くんは気付いているのかいないのか、何も声をかけませんでした。初めてのお友達に対して、遠慮のような、気が引けるような気持ちがあったのかもわかりませんね。それを見た黄色くんが、こう言います。
「いっぱいあるでしょ。一番長いよ。」
青井くんの気持ちを代弁するように、赤井くんに声をかける黄色くんです。こんなにも子ども達が育っていたのかと、感動してしまいます。
いよいよ面白くなってきましたね(笑)
写真を見てもらえるとわかる通り電車の数が全く違います(笑)
さすがにしびれをきらしたのか、青井くんが赤井くんの電車の列から電車をとろうと手を伸ばしました。すると、
風土くんがその手を遮るように座り込み、青井くんに優しく諭したのです。
まるで、ドラマを見ているような展開に、驚きました。
最後まで読んでいただけるとわかるのですが、風土くんは、最初から赤井くんに好感をもっていたようです。その気持ちから、このような行動に出たのかな、ということが後になって推測できます。
この風土くんの配慮、そして赤井くんのあそびを見守ろうとするその姿勢は僕らが愛する、見守る保育そのもののようにも思えてきます。子どもが子どもを見守るという姿を見せてくれたように思うのです。
そして、この関わりの終盤へ向かいます。
断られてしまいます(笑)
大人ならムッときそうな瞬間ですね(笑)何も言わず、そっと電車を引いた黄色くんでした(笑)
数秒後。
噛み合わない会話(笑)それを相手の気持ちを推しはかりながら、進めていこうとする風土くんのこの姿勢は、大人顔負けですね。
赤井くんは新しいお友達との会話よりも電車の玩具に夢中で、そのことがわかったのでしょう、風土くんは彼との会話をそっと止め、静かに電車のあそびの中に入っていきました。
さぁ感動のラストシーンです!
赤井くんに聞こえるか聞こえないかのような絶妙なトーンで(笑)黄色くんは赤井くんに電車の遊び方を教えるような、軽い牽制球を投げて、このやりとりは終了しました。ここまでの関わりで積み重ねた気持ちの集大成のような言葉に、思わず笑ってしまいました(笑)
11年目に入られました藤森先生が毎日欠かさず更新しています『臥竜塾』ブログ2011年10月12日『仲間』の中で、こう書かれています。
〝同年齢の仲間との間では、その関係において、二者関係にはならず、相手との共同作業になります。したがって、子どもは仲間との対等な関係から、他人とはどういう人たちであるかを学び、その関係になれていなくてはなりませんし、仲間間の交渉上の規則にも慣れている必要があります。
(中略)くりかえし仲間と接触を持つことで、幼児は自分の行為と相手の行動との間の随伴性を発見し、自分のパートナーに効果的に対応するにはどうすればよいのかがわかってきます。仲間は、伝達したり、攻撃したり、防衛したり、協力したりするスキルをゆっくり丁寧に作り上げていく機会を与えてくれる存在です。仲間は子どもにとっていろいろな意味で近い存在であるので、人間関係の発達に必要な能力を訓練するパートナーとしては、親よりも適しているといえます。
子ども同士の関係は、まだまだ研究される余地がありそうです。〟
新入園児のその子にとってはもちろんのこと、受け入れる側である子ども達にとっても、とても刺激があり、見守る大人も改めて子ども達の成長に気付かされたこの度の出来事でした。
〝子ども同士の関係は、まだまだ研究される余地がありそうです。〟
その言葉に深い納得を抱きながら、新しい仲間の誕生に大いに胸を馳せ、今日も子ども達の新しい姿を追っていきたいと思います。
(報告者 加藤恭平)
ラストシーンは、本当に笑ってしまいますね。相手がどんな物に興味を抱いているのかということを知った上で、どんな切り口で相手に自分の思いを伝えようかと考え抜いているのですかね。また、諭すような「(電車は)順番こにあそぶものですからね〜」という言葉を聞いて、自分の中で記憶に残っている言葉のほとんどは、怒鳴り言葉とかではなく、他人がぼそっと言い放った言葉であったり、ゆったりと且つ柔らかくて力強さがある言葉である印象があります。黄色君が放ったその言葉も、そうであるように思いました。
まず黄色くんは黄色くんなんだ!という部分にクスッとしてしまいました。赤井くんに好感を抱いていた風土くんの姿もいいですね。なんだか分かんないけど、この子とは気が合いそうだな〜というのは学校の入学式を思い出します。見知らぬ人ばかりの中でちょっと不安な気持ちを持ちながらも、なんだかこの人とは合いそうだなという人と関わりを持とうとするのが入学式では見られるのではないかと思います。私がそうでした。そして、不思議とその人と仲良くなってしまいます。なんだか気が合いそうと思えることって大切な力なのかなと感じました。