バランス

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園庭の運動遊具や園庭のあり方について、皆さんどう捉えるでしょうか。私の園でもそうなのですが、基本的に総合遊具は園庭の端にあり、真ん中は広い場所になっています。そこは三輪車で走ったり、ボール遊びをしたりと広い場所を使って遊ぶものをするときに使われることが多いです。一般的な保育園の園庭もそうであることが多いように思います。そのことについて、以前、ドイツの遊具メーカ-aibeのグリム氏と藤森先生の研修でグリム氏がこういったことを言われていました。

 

それは1.日本の園庭は遊具が少なく、様々な遊びができない。2.広いが一つの遊び道具しかない。ということでした。また、こんなことも言われていました。「日本人は遊具に信頼がない」つまり、「怪我するかもしれない」「落ちるかもしれない」といって、その遊具の本来の意図を理解よりも、怪我などのリスクを避けるということです。ドイツでは逆転の発想でした。

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ロフトの下には木のチップが敷き詰められています。

たとえば、ブランコですが、「日本ではぶつかっては危ない」「落ちたら危険」といって公園から撤去されていますが、ドイツでは逆に「転落の経験も必要」という考えを持っていました。しかし、やはりぶつかると危ないので、座席部分はゴムにしているということでした。また、一番怪我をするのは降りるときであり、その問題は地面にある。だから、地面を柔らかい素材や木のチップを敷き詰めている。とのことでした。

「危険」だから取り除くという日本の捉え方と大きく違いますね。そして、その怪我や危険のためにバランスを養うことにより自分で怪我を回避するようにしているといっていました。このバランスということが何かと重要視されます。こういった目的のため、その遊具一つ一つに込められた意図をしっかりと繁栄されており、「経験」を通して、どう子どもたちを育てるかという意味合い自体が遊具メーカ-にも考えられていました。

 

3図

フィーリングロードも一つのバランスを養う場所

 

 

 

 

こういった園庭の遊具の環境から前回の内容にもあった「運動」につながることが研修の中で触れられていました。というのも、前回のブログでもあったように日本は「運動」のとらえ方というと「走る」「跳ぶ」「投げる」といったように広いフィールドで力いっぱい走り回っている様子を運動と捉えることが多いです。そのため、園庭の環境もそういった活動ができるように意識されていることがとても多いです。

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ドイツの園庭の環境

 

しかし、私が以前ドイツの保育園に見学に行ったときも、園庭の中に広い広場があることは少なかったように思います。園庭が日本のように走り回って体を動かすといったようなものではなく、多くの「経験」ができる場所としての意味合いが強かったように思います。日本の様に「園庭=運動」ではなく「園庭=自然環境や外でしかできない活動」といったイメージでしょうか。

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乳児の環境でも不安定な場所が作られている。

 

 

 

 

そのため、岩が置いていたり、木などの自然環境があったりと日本の一般的な園庭とはまた違った環境でした。では、どこで運動をしているかというとそれは園庭だけではなく、室内でもしていることがありました。それもどちらかというとボール遊びだけではなく、アスレチックのようなもののほうが多かったように思います。それは前述にもあったように「バランス」が非常に重要視されているからなんでしょうね。

 

では、なぜ「バランス」が重要視されているのでしょうか。このときの話ではバランスを重視する内容が2つでていました。1つは「特別な機能を上げるのではなく、やりたいスポーツで発揮できるように 体のコントロール能力 と バランス感覚 を養うことが大切としていることです。最近ではスポーツの中でも「体幹」が重要と言われることが多いですが、バランス感覚はどのスポーツでも大切なことです。スポーツをするためにトレーニングするのではなく、自然と遊びの中でトレーニングすることでやりたいスポーツができるようになる。といったことですね。2つめは「集中力の強化」が言われていました。バランスを必要とすることは集中力を必要とします。難しければ難しいほどどう渡るかを考えます。そして、その経験が「問題解決能力」に繋がると考えられていました。

 

あくまでこれは遊具メーカーの考える遊具や園庭においてどう考えるかということの一端にすぎないことだと思います。しかし、この一つの話をとっても、私はあらためて考えることが多かったです。文部省のHPを見ても、日本人の身長は年々伸びているのに対し、運動量は低くなっています。「運動をできるようにする」のではなく、「運動を楽しくできる」ようにするにはどうしたらいいのか。そのために、どういったアプローチをしていくことが必要なのか。もっと幅の広い目線や意図で園庭においても環境を作る必要性をこの研修で感じました。

(投稿者 邨橋智樹)

バランス」への2件のフィードバック

  1. 園庭についてはいろいろと試しています。園庭の中で渡る、登る、滑る、くぐる、跳ぶ、などなどの要素を体験できるようにと職員みんなで考えながらやっているのですが、どの要素もバランスというのが大切になってくるのかもしれませんね。バランスというと自分の体をうまくコントロールするというようなことでもあるのかなと思いました。それはきっと「これをやっていれば大丈夫」ということではなく、様々な動きをしていくなかで生まれる体の動きが統合されたものがバランスでもあるのかもしれませんね。そう考えるとやはり園庭にはいろいろな動きが体験できる環境があることの方が自然ですね。バランス力が高まればケガもしにくくなりますね。そんなバランス力はただ広いという環境では難しいと思うのですが、そのあたりがもっと変わっていくといいですね。そして、そんな体バランスを体が覚えることで、バランスのいい人生にもつながっていったりするのでしょうか…だとするなら、私は…いや、ちょっと飛躍し過ぎてしまったかもしれませんね。すいません。

  2.  素晴らしい考察ですね。大変勉強になります。
     〝「日本人は遊具に信頼がない」つまり、「怪我するかもしれない」「落ちるかもしれない」といって、その遊具の本来の意図を理解よりも、怪我などのリスクを避ける〟〝スポーツをするためにトレーニングするのではなく、自然と遊びの中でトレーニングすることでやりたいスポーツができるようになる〟〝バランスを必要とすることは集中力を必要とします。難しければ難しいほどどう渡るかを考えます。そして、その経験が「問題解決能力」に繋がる〟など、本であったらドッグイヤーをしたくなる言葉の数々です。
     日本の保育が向上していく為に重要なことの一つに怪我の理解があると思います。保護者からの苦情につながりやすい性質のもので、それを恐れるあまり日本の保育園側も小さくなってしまう部分があるのだと思いますが、実際に保護者が怪我について寛容でない部分が強いことに加えて、保育者も保育園側も怪我についての理解を再確認する必要があるように感じます。そして、当事者である子どもも怪我について理解をする必要があるようにも思います。
     怪我について日本も徐々に考えを改め、深めていっている流れがあると思います。ドイツにあるような環境でのびのびと子ども達があそんでいる姿を当たり前のようにすることに、少しずつ近づいていることを感じたりもしました。

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