私の今いる園には「亀池」なるものがあります。以前はミドリガメ2匹とクサガメ1匹、あとアカミミガメが1匹いました。しかし、その亀池ですが、もう子どもたちは池にはまることがあったり、ミドリガメやアカミミガメが子どもたちの指を噛んだりで、なかなかな問題のある池になっていました。そこで、何か対策を打とうということになり、「亀池をビオトープにプロジェクト」を立ち上げました。
そこで、そもそもビオトープとは何だということになりました。始め私はビオトープといえばため池のことかと思ったのですが、ビオトープとはドイツ語で「生物が生きていく空間、住み場所」という意味です。つまり、一般的に考える「ため池」だけではなく、生物が自然に生きていく空間であればそれはビオトープになるのです。また、難しく言うと「周辺地域から明確に区分できる性質を持った生息環境の地理的最小単位」であるそうです。小さい生態系の縮図を作るということですね。以前、ドイツに保育研修に行ったときにもどの園においてもこのビオトープが置かれていました。というのも、そこでは子どもたちが生物や自然を感じることができ、その中で起きる生態系を自然と勉強・研究するために置かれているという話でした。
ドイツはヨーロッパの中でもとりわけ自然保護に力を入れている国です。ビオトープという考え方もドイツから出てきたものです。そして、自然保護のためにつくった法律が1976年に制定された連邦自然保護法です。そこでは「自然そのものの存在価値と、人間の存在基盤やレクリエーションの前提という観点から、自然と景観の保護と発展」が第一条で述べられています。そして、具体的には、生態系の再生機能の維持と発展、自然の公益機能と自然と景観の多様性などの長期的保護を載せています。2002年4月4日の改正では、目的に将来世代への責務が追記され、生物多様性の確保や、レクリエーションにおける経済性と自然保護との関係の定義、またその調和が強調されている。更に、自然・環境にやさしい農業の促進、市民や環境保護団体などの参加権の充実、(各州が土地の10%を提供する義務を負う)ビオトープ結合システムの保全、電線における鳥類の感電防止、国立公園と保護区域における発展の可能性、風景計画における自然保護の強化などを規定していました。とりわけ「将来世代への責務」というのが今とてもかんがえられているそうです。
また、この自然保護法では、開発とは自然を作り替えて、人工物となった時点で終わりではなく、もう一度自然にできる限り近づけるために最大限の努力をして終わらなければならないものだとされているそうです。そして、ドイツではこの法律のもと、企業や政治、市民が一体となり自然保護に取り組んでいるのだそうです。だからこそ、見学に行ったとき、町の中には森が多く残っており、森の幼稚園やビオトープがドイツの保育園や幼稚園などの教育機関でも多く環境にあったのだと思います。
そして、この法律には「生物の多様性の保全」や「ビオトープ」の概念も記されています。1つ目は絶滅のおそれのある生物はもちろん、ごく身近に自然に生息している生物とその生態系の保護の目標。2つめはビオトープを郊外から市街地の中心まで、また、池・湖・河川・湿地・草原から森林まで、さまざまな方法でつなげる工夫をする。3つめは現在の生物のビオトープの保護だけではなく、より多くの生物が住めるようになるための整備。開発事業の際にも自然の復元と創造に取り組む。と3つの概念を通して自然保護を進めていくように考えられています。
また、多様性の保全においては生態系を守ることと美しい景色を守ることが概念化されており、生態系を守ることは自然保護地域を作り、人の立ち入りを制限することでもともとの生態系を壊さないように配慮をしたり、開発が制限されることが行われています。美しい景観を守ることは連邦自然保護法の中にもあるように釣りなどのレクリエーションの利用に繋がります。景観保護地域ではレクリエーションの利用が許可されています。そして、生態系の価値が高まると自然保護地域に変更されることがある地域のことが景観保護にあたるそうです。こういった取り組みは森や郊外だけでなく、市街地においてもとても整理されています。ドイツの町中を見ていてもとても多くの自然が残されていたり、町の中にもたくさんあったりすんですね。
ドイツの自然環境の考え方はとても勉強になります。自然に対する姿勢などは見習っていくことも多いのは事実です。また、今の子どもたちにおいて、自然環境はどういった影響があるのかを改めて考える良い機会になるので、もう一度自分なりに整理していこうと思います。
(投稿者 邨橋智樹)
ビオトープは子どもの頃から大好きで、いつか自分もこんなものを作りたいと夢のように思っていました。その気持ちは今も変わりません。ですので、各地のビオトープのようなものを見かけると立ち止まって、しばらく動けなくなってしまいます。ずっと見ていられます。ドイツでの法律として自然保護が定められているというのはいいですね。定められていれば取りかかりも非常にスムーズになりますね。このあたりはまだまだ日本は遅れていますね。自然や生き物を大切に思える人になっていくためには、自然や生物が好きであること、興味を持って関わることが大切なように思います。何もないのに、自然は大切、生き物に優しくと言われてもなかなかイメージが湧かないのではないでしょうか。自分の生活の側にあることが大切だと思うので、そんな意味でもビオトープはいいですね。本当にいいなと思います。私が水辺が好きというのもありますが笑
神奈川県に小網代の森という地域があります。70haほどの緑地でその森には川も湿地もあり、豊かな自然、生物が残っています。川の上流から河口までがその森の中にあり、ここに降った雨は相模湾へと流れていきます。これを「流域」というそうで、森と湿地、干潟と湾とを川が結ぶ一つの流域がまるごと自然のまま残されている場所は関東ではこの小網代くらいではないかと言われています。そんな小網代を守ってきた人たちを中心に流域で自然保護をしていこうという動きがあります。自然を流域ごとに分けて保護していくことが環境にとっても自然であるという考え方で私もまだうまく説明ができないのですが、とても興味のある取り組みでもあり、場所でもあり、いつか訪れたいとずっと思っています。ちょっと話はズレてしまいましたが、もっと自然保護ということを幼児教育の中により具体的に考えていけるような取り組みはしていかなければいけないなと思います。
ドイツの取り組みは知れば知るほど魅力的で驚いてしまいます。国を大切にし、ずっとこのようにして政策を練り実行してきたのだと思うととても感動します。
「亀池をビオトープにプロジェクト」、素晴らしいプロジェクトが立ち上がりましたね。大掛かりなプロジェクトであることが伺えますが、そもそもを辿り、具体的に進んでいけば必ず成功しますね。このプロジェクトを進めていくところにも、邨橋先生の中で〝7つの習慣〟が活かされているだろうことを感じて何だか嬉しいような気持ちになります。勝手な解釈で申し訳ないのですが、実践され実行されている人が傍にいるような気がしてとても励みになるのです。次回の報告もとても楽しみにしています。