ビオトープ2

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前回、ビオトープの話からドイツの自然環境に対する行政の取り組みを紹介しましたが、では、実際自然を大切にするということは教育現場の中ではどのように伝えられているのでしょうか。

 

最近、ビオトープを作るにあたり、幼稚園にあった塩瀬治氏の「ビオトープ みんなでつくる 知識編」という本を参考にしました。7年前の本なのですが、そこにドイツにおけるビオトープの考え方が書かれています。

まず、ドイツの環境教育のポイントですが、そこには7つの柱が書かれています。1.感覚体験の場であること。自然の授業の中で経験することが大切である。 2.自然の中で遊びながら学べる場であること。 3.aesthetic(エステーティッシ)であること。美的追求心があること。 4.環境利用の方法について学ぶ場である。森林や湖について学び、林業に農業について学ぶ。 5.自分がここで感じた自然を記録できる場であること。 6.森や湖などの自然がもつ精神的な意味について学ぶ場である。歴史の中でそれがどのように人間の文化や生活に関わってきたかを学ぶ場である。 7.科学的探究の場であること。

 

この7つのポイントが環境教育において重要視されています。これらの考えを見ていくととても印象的なのが、「感覚体験・経験」というものがとても重要になっているということです。そして、そこから「学ぶ」ということの考え方の違いです。ここでの「学ぶ」は「先生から教えられる」ものではなく、自分で経験し、体験し、探求・追求をもとに自ら感じ、学ぶということが見えてきます。「経験・体験する場」を作ることをいかに重要視しているのかが分かりますね。というのも、それも1920年頃から「学校は知識を詰め込むだけの機会のような場所ではなく、人間になるための教育の場である」という考えが広まり、各学校での取り組みが始まったそうです。

 

この本にはいくつかのドイツでの教育現場で行われている環境や取り組みが紹介されていました。そして、その紹介された中に私がドイツに行ったときにあった環境もありました。

 

図2

園庭環境にあったフィーリングロード

 

1つはフィーリングロードです。写真にもあるようにいろんな素材が地面にうまっている道です。ここではレンガから枯れ葉など様々な素材によってできた道を介添え者と共に体験者とあるく様子が紹介されています。こういった環境は普段使わない皮膚感覚が刺激されることで、いろんな体験をすることを目的としています。私がドイツに行ったときにはその考えを含め、いろんな足場を経験することの大切さも一緒に説明されていました。というのも最近の街は舗装され、固められた歩道が多く、不安定な足場というものが少なくなっています。だからこそ、いろんな足場を経験することで、自然とバランス感覚も一緒に養うことができると言っていました。とくにこのバランス感覚というものはドイツの遊具にとっても非常に重要視されている能力であるそうです。というのも、今年のGTサミットのあとにあった研修でドイツの遊具メーカーaibeの方がこう言っていました。「バランスを必要とする遊具は集中力を強化する。また、コースを作ることでバランスを取りながらどう渡るかを考えることは問題解決能力を養うことにもなる。」ということをバランスについて言っていました。バランスを取ることは非常に集中力を使います。体を使うということだけではなく、脳の活性化や考える力も一緒に養うということですね。また、そのときに藤森先生は「今の子どもたちは体が大きいのに運動量は低い。今の時代、特別な機能を上げるのではなく、やりたいスポーツで発揮できるような体のコントロール能力やバランス感覚を養うことが必要ですね。」と話していました。ただ、そとで走り回るだけが運動ではないのかもしれません。だからこそ、ドイツの保育園の環境は走り回るといった環境だけではなく、自然物が多い園庭環境なのだと思います。自然の中にはバランスを取らなければいけないような所は多いでしょうし、それだけで非常に優れたアスレチックですから、いろんな能力がつきます。少し話はズレてしまいましたが、こういたフィーリングロードはこれらの点を踏まえて、必ずといってもいいほど、多くの保育園や幼稚園が環境の中に取り入れていたのが印象的です。

図3

不安定な足場で遊ぶ 乳児

 

もう一つはハーブ園です。様々なハーブが育てられています。私が言ったときにもミントやレモンバームなどのものがありましたが、そこでは葉の臭いや花を楽しむことがあります。また、それらの臭いをお互い説明する活動などをするそうです。というのも臭いを説明するのは体験者の個人的体験によるものが多く、同じ植物の香りでもひとによって多様な反応が見られます。人が違う感じ方をもっていることを学び合うことも大切であり、表現することや他の意見を聞くことを活動の中で行うそうです。

 

図1

ドイツの園庭にあったハーブ園

そのほかには、野鳥の営巣や観察小屋。池をおくことで水生生物を観察するなど、さまざまなことが紹介されていました。そして、それらの環境は基本的には「五感」をつかうことを目的にされています。今まで保育園でこれほどまで、園庭の環境に意図をのせていたかなとドイツの環境を見ながら考えていました。

 

もちろんここで紹介されていることの多くは小学校が対象で書かれていることが多いです。しかし、これらの環境は実際には幼稚園や保育園でも設備されているところがありました。そこには「体験や経験」が中心となる考えとしてあるからそういった環境が作られているのだと思います。まさに「環境を通して」ですね。

 

「自然」を保育の中に取り入れるにはどうしたらいいのか。体験や経験する環境をもっと作りたいと思うのですが、どういった視点で考えていけばいいのかを考えるいい機会になります。

 

(投稿者 邨橋智樹)

ビオトープ2」への2件のフィードバック

  1. 自然を大切にする、自然を保護するということをいくら知識として学んでも本当の意味でそのような感情はなかなか芽生えてこないのかもしれませんね。自然を大切にする気持ちの前にはきっと自然と関わり、関わったことで自然や生き物が好きになる、興味が湧くという気持ちがまずは必要なのではないかと思います。そんな体験ができるような環境はしっかり整えておきたいなと思いました。バランス能力が向上することでケガをするリスクも減っていきますね。何もない園庭を用意することで、危険やケガを回避していると思っても実際はそうではなく、危険や安全に遊ぶためのバランス能力が養われる機会を奪っているのかもしれません。身のこなしだけではない様々な場面で「バランス力」は大切になってきそうです(バランス能力のない私なので切に思います)。そんな様々な場面でのバランス力の芽生えももしかすると自分の体で感じるバランスから始まるのかもしれませんね。

  2.  ドイツの環境教育のポイント、素晴らしいですね。このような意図の中で子ども達が思いっきり楽しめると思うと、あそんでいる子ども以上に見守っている大人の気持ちも、見ていて楽しい、まるで心が躍るような感覚になるのではないでしょうか。
     フィーリングロードやバランスを必要とする遊具などがなぜ日本で広まっていかないかという理由の一つにやはり子どもの怪我に対する保護者の認識不足が挙げられるかと思います。いつから子どもが怪我をすることに対してこんなに過敏になってしまったのかと思うのですが、成長過程において必要なことという認識をこれからますます根付かせていかなくてはなりませんね。モンスターペアレンツの存在が一際注目されていますが、その人達も実は孤独で知らないことが多いだけなのかもしれません。日本中の子ども達が伸び伸びと素晴らしい環境を享受できるように、僕たちは働きかけていかなくてはなりませんね。

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