共食と乳幼児期の発達

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2019/6/26 共食Day

塾長がテーブルへ来て下さったこの日。

席を子どもたちが自由に決め、「いただきます。」

すると、ぐんぐん組(1歳児クラス)の子が食べすすみません。

見かねたすいすい組(5歳児クラス)の子が身を乗り出して

すると食べます。

ぐるっと回って隣で

「もう隣に座ってあげたら?」との友だちのアドバイスを受け、

椅子も移動

最後まで食べさせてあげていました。

2010年11月23日『共食と乳幼児期の発達』の中でこう書かれています。

人の食事は、人の発達にずいぶんと影響を与えます。他者に食べさせるという人間の特徴である行為から、役割交代をし始め、次第に自己を知り、他者を知るようになると、次第に自己主張をするようになります。食について、北海道大の川田准教授が示した事例は、誰でも思い当たるでしょう。
「1歳を過ぎたころの子どもにスパゲッティと野菜を食べさせようと、「これは?」とトマトを差し出すと、子どもは顔をしかめてのけぞります。そこで、今度は、「じゃ、これは?」と青菜を差し出してみますが、より一層顔をしかめてみせ、不快そうに手を振って「あ゙?」と非難の声を上げてソッポを向いてしまいます。そこで、「どうしたのー?」とやや非難気味で、再度「赤いのは?」とトマトを差し出しますが、またもや顔をしかめ手で顔を隠してしまいます。そこで「じゃ、自分で食べる?」とプレートを差し出すと、子どもの表情が一変し、トマトに手を出し始めました。今度は、スパゲッティを食べる段になり、同じように子どもが自分でプパゲッティを食べようとしますが、うまくすくえないのを見かねて、箸でつまんで子どもの口元にもっていくと、子どもは拒否をします。その後、大人の差し出しを受け容れたかに見えた時でも、これ見よがしに吐き出し、自分で食べようとします。「なんでー、おんなじのよ?」といっても、更に、子どもは差し出しを拒否した後、今度は自分の方から大人に差し出して、役割逆転が起ってしまう」という事例です。
ここで、大人は「おんなじのよ?」と思っていますが、子どもにとっては同じではないのです。どこが違うかというと、おそらく、大人の意図、あるいは大人の意図の下で進められるという“手続き”に対する拒否感情が生じているのではないだろうかと分析しています。社会心理学には、心理的リアクタンスという概念だそうで、「態度や行動の自由が脅かされた時に喚起される、自由の回復をめざす動機づけ状態」(「心理学辞典」有斐閣)というそうです。このリアクタンスは、もともと説得理論のひとつとして、セールスなどでの押しつけがましい説得が逆効果をもたらすことの根拠とされてきたのですが、リアクタンスが生じるためには、自分自身の行動や態度の自由を認知している必要があり、自由を認知しているにもかかわらず強制されると禁止された行動が遂行されるのです。

年上の子に年下の子のお世話をさせようと意図的に席を設定すると、意外とこちらの思惑通りにいかないこともあったりして、なるほど“手続き”に対する拒否感情が生まれてしまっていたのかも、と考えさせられました。

川田さんは、こうまとめています。「現代の日本社会では、共食の中で子どもが自然に食行動や食文化、対人関係や自他理解を発達させる環境に乏しいといえる。共感的な反応、役割の交替、自由の認識と自己主張性という、乳児期の発達における重要なアスペクトが、食事場面には凝縮されています。そして、いずれも生後9 ヶ月から12 ヶ月頃に質的な転換があるかもしれないと思われ、その転換は、“やりとり困難期”とも言われるように、子どもの行動が複雑になって、意図が分からないと養育者を困惑させるものでもあるだろう。今後、食事場面をより充実させることができれば、乳児の社会的発達を保障する土台を作ることができるのだとも言える。食と社会的発達の関連を探る研究が期待されていると言えよう。」

互いに育み合えるこういった行事が大切であることを改めて感じます。

(報告 加藤)

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