単位展 1mm

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突然ですが、「空気、水、モノ、光、音、自然環境――そのままでは捉えにくい世界に一定の基準を設けることによって比較や共有を可能にした知恵と思考の道具」とは何か?

 

それが「単位」です。

 

先月、六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催されていた【単位展】に行ってきました。職場の方から「面白いイベントがやってるよ」と教えて頂き、そのイベント内容を調べてみると、ある言葉に出会いました。その言葉に惹かれ、すぐに足を運んだのです。その言葉とは、サブタイトルにもなっている、【あれくらい それくらい どれくらい?】です。

普段、何気なく使っている「あれくらい」「それくらい」という言葉ですが、それは実際「どれくらい」なのかを、実際に「単位」という道具に焦点をあてて、その生まれや種類、それを囲む社会背景に至るまで、新たな見方を提案してくれる企画であると感じました。

ホームページにはこう書かれています。

「単位で遊ぶと世界は楽しくなる。単位を知るとデザインはもっと面白くなる。単位というフィルターを通して、私たちが普段何気なく過ごしている日常の見方を変え、新たな気づきと創造性をもたらす展覧会です。」

まず、単位で遊ぶことによって、世界を楽しみ、デザインを面白く感じることが目的であることがうかがえます。また、単位フィルターが新しいものの見方を提案してくれる気配がプンプンします。そして、何より園のテーマである「伝統」に関連する予感もありましたし、実際にどのような企画をして、参加者に「単位」というものを伝えているのかが気になったのです。そのようなワクワクドキドキと共に、展覧会に行ってきました。今後は復数回に渡って、この「単位展」についての報告と考察をさせていただこうと思います。

まず、21_21 DESIGN SIGHTという建物ですが、2007年、建築家の安藤忠雄氏によって建てられました。地上1階地下1階の低層建築であり、折り曲げられた巨大な鉄板の屋根が地面に向かって傾斜する独創的な造形の建物は、ほとんどのボリュームが地下に埋まっており、中に入ると外観からは思いもよらない空間が広がっています。そして、安藤氏のメッセージが記載されていたのでご紹介します。

『..かつて、ポール・ヴァレリイとポール・クローデルが対話し、「世界中の民族の中で滅びては困る民族がいるとしたらそれは日本人だ」と言ったことがあります。私はそれを、日本人の固有の美意識を滅ぼしてはならないということだと解釈しています。美意識には、たとえば責任感とか正義感といったものも含まれます。なかでも人や自然に対する礼儀、生きていくことへの礼儀。あるいは、ものをしっかりと見つめることもそうでしょう。ところが、1960年代に高度成長期を迎えると、お金が儲かればいい、お金があれば豊かになれるという考えが主流になり、かつての美意識はどこかに消えてしまった。東京の街を見ればわかります。美しさを求めた景観ではありません。経済効率を優先した結果ですよ。』

このように、日本の「責任感」や「正義感」も含めた【美意識】に対して警告を鳴らすかのように建てられたのが、この21_21 DESIGN SIGHTです。

21_21 DESIGN SIGHT

21_21 DESIGN SIGHT

デザイン性溢れた道のり

建物までの道のり

かつては誇りでもあった美意識といったものを振り返り、未だ発揮されていない私の日本人として眠っている潜在能力を呼び起こす旅になるかもしれない、そんな予感を“ちょっと”や“少し”ではなく、1mmほど感じたのでした。

(報告者 小松崎高司)

単位展 1mm」への2件のフィードバック

  1. 安藤忠雄さん設計の建物をいつかは見てみたいなと思っているので、その時が来るのを密かに楽しみにしていたりします。「美しさを求めた景観ではありません。経済効率を優先した結果ですよ」とありましたが、確かにそうですね。この考え方は至るところにあると思います。私たちが当たり前だと思っている社会の仕組みも経済を成長させるための戦略が実は隠されていたりということがありますね。伝統に注目する、伝統を大切にするということはそのような考え方を改めなければという思いもあるかもしれないなと気がつきました。経済中心になりすぎてしまうと伝統に重きが置かれず少しずつ壊されてしまう、壊してしまうというような感覚も湧いてきます。
    「単位展」なんだか興味をそそられます。このようなところに週末にでかけることができるというのが東京のいいところの一つでもありますね。なかなか実際に行けない分、報告を楽しみにしております!

  2.  流石小松崎先生。技ありな報告です。フックの効いた文章に思わず引き込まれてしまいます。
     安藤氏のメッセージはとても印象的ですね。日本人として誇らしくもあり、また背中を正されるような感覚になります。歴史建造物が並ぶような景観は、都市の中には見受けられないものとなっているのかもわかりません。僕も新宿周辺は思い入れがあり、歩くのは好きなのですが、美しさとは呼べないものがそこかしこにあることは事実です。「部屋のゴミから悪い気が出ていて、それがその部屋に住む人をダメにする」として、片付けをすることを啓発するような内容の本を読んだことがありますが、都市部こそ、そのような考え方が必要のような気がします。

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