実習日誌④

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 先日、私がいるクラスに入った実習生が、〈反省・考察〉の欄にこのような感想を記述していました。
 
 『今日は、保育者として充分に考えてから行動するように心がけた。帰りの会のとき、男の子同士の間でケンカが発生したが、近くに居たにもかかわらず、私はどこまで見守れば良いのか分からずケンカを止めることができなかった。子どもに対しての援助は加減が難しく、まだまだ先生方の観察が足りないと思った。』
 
 みなさんだったら、どう返答するでしょうか。
 
 私は一瞬悩みましたが、前回感じた「共感」の大切さとあの言葉を思い出し、こう記入しました。
 
 「“どこまで見守れば良いのか”は私たちも日々考えています。そして悩んでいます。しかし、その悩む過程にこそ保育者としての資質や楽しさがあると思います。その子は今どんな気持ちなのか、言葉で相手に伝えるのが難しいのか、どうすれば自ら手を出さなくなるのか、笑って楽しく過ごすためには何が必要か等、その子と十分に関わった後、理解しようとしています。“どこまで”見守るかより、共に生活し、関わっている中から“どこで引けばよいか”といった〈引き際〉を考えてみると、また違った形で子どもを見守ることができると思います。」
 
 これらの言葉の裏には、自分が言われて嬉しかったこと・塾長だったらどう答えるだろうと考えることの3つを大切にしました。また、〈引き際〉の話は、同じ塾生の邨橋氏が以前どこかで話した内容を使わせて頂きました。なぜ私がその話を知っているのかというと、塾長が嬉しそうに他の塾生に伝えてくれたからです。
 
 自分が普段している保育をそのまま言葉にする・伝えるという過程は、よく考えてみるとなかなか難しいものがあります。ましてや、相手が理解しやすく且つ希望の光が見えて明日からの保育が楽しくなるような言葉がけというのは簡単ではありません。そんな時は、自分が共感できた話や尊敬している人の言葉で印象に残っているものを選び伝えるといったやり方をするようにしています。例えそれが生意気そうに映ったとしても、その言葉の姿は実際にできているのかより“何を目指しているか”が重要な気がします。私自身、「見守る保育」ができているのか正直分かりません。ただ、それを“目指している”ことは断言できます。また、このように自分なりの発見や答えを伝えることで、自分の背筋がピンっとなる感覚を覚えるのです。
 
 そして、その実習生が〈自由記入欄〉にこんな言葉を残していました。
 
 『短い期間だったが、わいらんすい組のみんなが名残惜しくて仕方がありません。』
 
 この言葉から、この実習生は十分に子どもと関わり、保育の“楽しさ”を体験することができたのではないかと感じます。実習最大の目的とは何でしょう。現場の大変さを探すことでしょうか。それとも、指導職員に厳しく注意されることでしょうか。私は「保育の楽しさや素晴らしさを感じること」だと思っています。
 
 実習生であった私の実習日誌の最後〈実習を終えて(実習生の感想)〉の欄には、こう書かれてあります。
 
 「子どもの本質は、日々の“驚き”と“挑戦”と“感動”にあると感じました。目に止まった環境に驚き、自分でやりたいと挑戦し、できたことに感動するといったように数多くの様々な経験をすることで自分や他者、そして社会を知っていくのだと思いました。そのような経験を、思いたったらすぐにできる環境を用意している貴園で実習できたことにとても感謝しております。」
 
 この実習で、“保育の素晴らしさ”を体験し、自分なりの答えを出したのだと思います。そして、そういった思いを感じさせてくれたその園に、今、私はいます。〈実習指導者所見〉欄に記入してくれた先生たちと、今、一緒に働いています。実習で何を学ぶかは、実習でどんな人たちと出会うかが大きく影響しているのかもしれません。
 
(報告者 小松崎高司)

実習日誌④」への2件のフィードバック

  1. 実習の目的は『「保育の楽しさや素晴らしさを感じること」だと思っています』とありました。これを読んだ時に、自分は実習生に対して、保育の楽しさや素晴らしさを感じてもらえるような関わり方をしていただろうかと考えました。必ずしもそうだとは言えませんでした。聞かれたことに答えるということがほとんどだったように思います。実習の後、実習生が保育の道に進むということを考えると、保育の本質、奥の深さ、そして、それを知ることの楽しさを共に共有できるような関わりができるとお互いに学びの多い時間になるのかもしれません。頻繁に実習生が来ることはないのですが、今度そのような機会があれば、接し方が変わるように思えました。

  2.  僕は学生の頃、実習の最終日のねらいに『最高の思い出をつくる!』と書いたところ、「実習はあなたの思い出づくりの場ではありません」と書かれ、E判定という最低得点をいただくという思い出すと苦い思い出がばかりの実習時代でした。そのお陰か実習生を見ると、どうしても優しくしたくなるというか、力になってあげたくなるというような気持ちが湧いてきます。実習生からしたら僕もおじさんなのだろうと思うので、あまり積極的に関わると気持ち悪るがられるのではないかと距離感を大切にしなければと思うところではありますが、質問などをされるともう待ってましたという感じです。先日の西村くんの報告に『10を学んで1を語れ』とあり、心に刻み付けて年明けから過ごしていきたいと思います。

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