役割交代と協力

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以前「逆向きのエプロン」という題で、子ども同士の関わりにおける「能動と受動の役割交代」について報告させて頂きました。その中に、エプロンを付けてもらっている1歳児の男児がいました。今回は、その男児が、他児の助けを感じ取って自ら手助けしている場面があったので、報告したいと思います。

1歳児の子どもたちは、食事をした後に、自分が使用したエプロンとタオルを汚れ物袋に入れます。しかし、フックにかけられた袋の片方の取っ手のみを外し、片手で汚れ物を持ってその袋に入れるという行程が難しいようで、汚れ物袋を丸ごと職員のもとに持ってきて「やって!」と、職員が袋を持って口を広げ、子どもが汚れ物を入れることもあれば、コツをつかんで全ての行程を自分でこなす子どももいます。

男児は、その行程が出来ずに悪戦苦闘し、周囲を見回している1人の女児を見つけました。その様子を見て、“目の前の人は物を入れようとしている”、“助けを必要としている”などと、他者の気持ちを察したのだと思います。男児は、自らその子のビニール袋を持ち、女児の手助けをし始めました。大人の役割を子どもが交代し、そして、その子どもにしてもらった子どもが別の子どもの助けとなる、そのような一連の流れが見れた気がします。「能動と受動の役割交代」が、人類の存続に関連している「協力」という戦略とつながっているのではとも思える姿でした。

持ってあげるよ

持ってあげるよ

そのような子どもの同士の関係のなかで、社会を形成していく基礎を培っている子どもたちに、私たちは今後どのような対応をすればいいのかと考えた時、その男児が協力できる場面を伝えたり、それに気が付く機会が増えていくような環境を整えていくことなのかなと思いました。例えば、職員に「やって!」と汚れ袋を持ってきた子どもに、「◯◯君ができるからお願いしてみたら?」という声かけをしたり、その男児の汚れ物袋かけの周辺に、まだ1人で入れることができない子どもを配置し直すとか、袋に入れようとしている他児が見える場所に男児の食事する椅子を配置するなどでしょうか。そのような環境設定をして、子どもたちの動向を観察するのは、きっと楽しいでしょうね。予想とはまた違った子どもの動きなんかも見られて、その度に次の環境を考える、そういった過程が保育の醍醐味でもあると感じています。

また、ビニール袋を持ってもらった女児は、いったい何を思うでしょうか。いつもは先生にやってもらうことを、自分と同じような他児がしてくることで、これまでにない新たな刺激を感じたのは間違いないと思います。そのような刺激が、その子の発達のための大切な経験であると思いますし、対人関係・社会性の基礎を培うだけでなく、「協力」行為の輪を広げ、それらを加速させていくものでもあるのかなとも感じました。

(報告者 小松崎高司)

役割交代と協力」への1件のフィードバック

  1. 子ども同士の関わりをどう構成していくのかということについて、小松崎さんの報告はとても参考になります。私はまだまだその部分はしっかり見えていないなと日々の保育を振り返って反省しました。そのためには子どもの姿を観察していかなければいけないのですが、どの部分をどういった視点で見るのかということもしっかり理解しておかなければいけませんね。日々の保育の中でそのような専門性を高めていけるようになりたいなと思います。

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