子どもはなぜ、他児との関わりを求めるのでしょうか?
1歳児同士で玩具の取り合いがありました。2人は険悪なムードを漂わせます。「ケンカするなら近づかなければいいのに…」と思ってしまうのですが、またすぐにその2人は近づき、お互いの様子を見合ったり、マネをしたり、時には微笑み合ったりもするのです。
他児とのトラブルによって、打ち拉がれたように地面に突っ伏している1歳児がいました。そこへ、泣き崩れているその子を見た近くの0歳児がハイハイで寄ってきます。すると、何をするというわけでもなく、ただそばに座り込み、時折背中に手を添えたりしながら様子をうかがっているのです。
手を繋いでいるある2人を見て、自分もそこに加わりたいと相手に訴えている1歳児がいました。しかし、相手は手を繋いでくれませんでした。半ば泣いているような声をあげながら、手を振り払われても、振り払われても、何度も手を繋ごうとします。「目の前にある玩具で遊べばいいのに…」と思ってしまいますが、どうしてか他児と手を繋ぐことを求めています。
このような子どもたちの姿を目にすると、冒頭にあった疑問が頭を巡るのです。塾長のブログには、人類誕生から生存戦略に至るまでの軌跡が数多く考察されています。そこには、ホモサピエンスの生存戦略によって、誕生以来生き延び、遺伝子をつないできたキーワードとして「協力」「共有」「助けよう」「分かち合いたい」というのがありました。そこから、先ほどの子どもの姿を考えていくと、子どもたちは「生きようとしている」ということが理解できます。どうして子どもたちは、他者とも関わりを求めたり、時には自ら嫌な思いまでするような行動をしたり、相手の気持ちを分かろうとするのかというと、それが「生きるため」には必要なことであったからなのですね。
塾長のブログには、こうも書かれてありました。
『現在、「対人知性」と呼ばれる知性が、生きていくうえで最も大切だと言われています。この能力は、他人との関係性を築く力ですが、いわゆるコミュニケーション能力と言われるような、人と人とが言語によって会話をするとか、自分の考えをきちんと主張するという力ではなく、他人を理解する能力をいいます。例えば、「この人の動機は何か」「あの人はどう動くだろうか」「皆と協調して動くにはどうすればいいのか」といったことを理解する能力なのです。』
また、対人知性の本質は、『他人の気分、気質、動機、欲求を選別し、それに適切に対応する能力』であるとありました。「生きていく上で最も大切」という単語には惹かれますね(笑)。
来年3月5日(土)に行われる行事「成長展」のテーマは【対人知性】です。互いに求め合う子どもたちのつながりや、他者の気持ちや行動を「察する能力」、そして、それらを考慮した反応や行動に着目して、保育を見ていきたいと考えています。
(報告者 小松崎高司)
まさに小松崎さんの行動宣言でもある今日の内容を読んでいると保育をする上で私たちは何を大切にし、どういう見方で子どもたちを見ていかなければいけないのかというのを教えてもらえるようであります。保育の中で日々の流れに追われるばかりではなく、子どもたちの姿を少し立ち止まって見ることで得られる気づきをもっと大切にしていかなければいけませんね。自分自身の行動を振り返りいつも反省させられます。
〝「ケンカするなら近づかなければいいのに…」と思ってしまうのですが、またすぐにその2人は近づき、お互いの様子を見合ったり、マネをしたり、時には微笑み合ったりもするのです。〟すごくよくわかります(笑)まさに、類は友を呼ぶ法則ですね(笑)
1歳児クラスの対人知性について、ここからスタートしていったことを思うと感慨深い思いがします。ここから小松崎先生は、たくさんのドラマに出会います。そのドラマが、多くの人の心に響き、対人知性をより具体的に、現場からの視点として説明していくことができるようになっていきます。この報告こそ、塾生の対人知性報告の出発地点だと思います。