2月の寒い朝、用務の西村氏が、テラスに出来ていた「氷」を3・4・5歳児クラスに持ってきてくれました。非常に大きくて分厚く、子どもたちも興奮気味に手で氷の感触を楽しんでいました。その氷も、ちゃんと“子どもたちに氷遊びをさせたい”といった思いから、前日に水を貼って意図的に氷を作っていたということを聞きました。さすが、環境マイスター山下氏の弟子ですね。私は、そういうのに弱いです。人の思いをなんとかして活かしたい、子どもたちに、氷遊びを通して不思議を味わわせたいと感じて頭に思い浮かんだのが、去年学童児とやっていた先輩保育士のある「実験」でした。
その実験とは、氷にストローを押し当て、息を吹きかけ続けたらどうなるかという実験です。さっそく、製作ゾーンにあったストローを持ってきて、子どもたちに問題提起をしてみました。子どもたちは「氷が動く」「解ける」などと予想しながら、実験し始めました。
氷の厚さは2㎝くらいあるので、なかなか結果がでません。しかし、子どもたちは一心不乱に息を吹きかけ続けていました。しばらくすると、ひとりの男児が、その部分だけ氷が解けて窪み始めたことに気がつきます。実際に手で触れてその窪みを確認したり、周囲の子どもたちもその感触に感動していました。「もっとやってみよう」といって、さらに続けていると「あ!穴があいたー!」と叫び、達成感と満足感を浮かべた表情をしていました。
先日、ある子どもが粘土遊びをしていました。「俺ね、長—いやつ作る!」と意気込んでいます。すると、粘土をうどん状に細長くし始めました。一緒に粘土遊びをしていた子どもも、その様子を見て“楽しそう”と感じたのか、おれもわたしもと、粘土を細長く作り、それをつなげ始めたのです。“これは、面白いことが始まるぞ”と、私の面白センサーが反応をしたので、「メジャー(巻尺)」をすぐに出せるよう用意していました。子どもたちは、ものの数分でテーブルの長さほどの物を作り、そして、そこでは足らないと、ついには、床でつなぎ合わせていました。
しばらくして、満足いく長さに到達したのか、「ほら!長いでしょ!」と言ってきました。私は、メジャーを出したくて出したくて仕方がなかったので、「どのくらい長い?」と、少々意地悪な質問を投げかけました。すると、みんなに「?」が浮かび、沈黙になりましたが、一人の男の子が「測ってみればいいんだよ」と言ったのです。以前、ブログでも紹介した「身長計」を使おうとしていたので、もっと便利な物があると、手に持っていた「メジャー」を自慢げに出すと、子どもたちは「うおぉ〜!」とうなっていました。まさに120点の反応です。(笑)
さっそく、みんなで長さを測ってみました。結果は、203㎝。子どもたちの中で、「203㎝」は粘土で表現できるという一つの経験になったと思います。最後に、中心になって指揮をとっていた男児が、その203㎝の粘土をきれいに渦巻き状にしていました。“面白い!”と思って、その長さも測ってみると、なんと12センチ。「203㎝が12㎝になった!」と、何に使えるかは分かりませんが、そんな変化球も伝えてみました。
子どもの姿を見て、その瞬間をどう活かそうかと考える大人のように、そんな大人の姿を見て、それはどこに活かせるかと状況を見て考えて選択できる、そんな子どもの姿を望んでいきたいです。
(報告者 小松崎高司)
自分が行った行動から何かが変化するというのを感じたり、見たりするのはとてもおもしろく、興奮しますね。しかし、なかなか変化が見られなくても、氷に向かって息を吹き続けた子どもたちの姿は何かが起こるんじゃないかという期待もこもっているようで、自分が考えたことが起こるのか、それとも何か違うことが起こるのか?というドキドキ感も感じるようです。小松崎さんの問題提起がそんな子どもたちの姿にもつながっているように思いました。粘土を長くする遊びもそうですが、このように、子どもたちがやってみたい、試してみたいと思ったことを一緒になって楽しみ、提案することで、子どもたちの考える、試してみたいスイッチのような学びがどんどん深まっていくように思います。そんな子どもたちの姿を見つけ、そっと中に入ったり、楽しみを提案したり、一緒に楽しんだりできる余裕を保育者として持っていないといけないなと思いました。
〝遊び心〟という点では、子どもも保育者もとても対等な立場にあるのが新宿せいが保育園です。子どもが面白いことをしていると何だかムラムラしたような気持ちになるのは(笑)皆に共通してあることなのかもわかりません。自分の知っている遊びを伝えたいという思いと、子どものしている遊びを広げてみたい思い、新しい遊びを提案してみたい思いと、様々な遊びに対する思いを快く実現できる環境は、保育者にとってとても幸せなことです。
保育園で働く喜びを保育者が味わえること。これが僕ら保育者が望む環境ではないか、と感じます。