先日、怒ること、叱ることについて、とても考えさせられたと同時に、気持ちがとても救われたことがあり、自省の意味も込めて、報告をさせていただきます。
新宿せいが保育園は、20:30までが開所時間である為、18:30以降の子ども達に、補食や夕食を提供しています。
それはある夕食でのことで、その日のお味噌汁の具はジャガイモでした。
子ども達といつものように「いっぱい・ちょっと」を尋ね、自分で自分の食事の量を決めてから、夕食をスタートしました。
2歳児クラスの男の子が、大好きなお肉のおかずを最初に食べ、「おかわり!」と来ました。
お味噌汁も、おかずも食べてからにしようか。何の気もなしに言ったことだったのですが、それに対して、
「ヤダ。だって汚い。」
と、おつゆだけになった味噌汁のことを指して言うのです。
皆さんなら、どう対応されますか?僕は、調理の先生が一生懸命作ってくれていることなどを、伝えました。
すると次の瞬間、その子は、目の前にあったおにぎりを皿ごと放り投げました。
皆さんなら、どう対応されますか?(笑)未熟な僕は、怒ってしまいました。
新宿せいが保育園では、19:30を過ぎると、遅番担当の先生二人での保育になります。
その子も、おかわりはできないは、怒られるは、で、本人ももうどうにでもしてといった感じになり、とりあえず食事の場所からあそびの場所へ、遅番担当のもう一人の先生の方へ移動をしてもらいました。
少し落ち着いたようで、それでも聞こえる小さな泣き声に、その後、もの凄い自省の念というのでしょうか、どうして怒ってしまったのか、怒ったり叱ったりする他にもっと他に方法はあったのではないか、と、とても落ち込みました。
藤森先生の臥竜塾ブログ
〝どうも人は、普段何か面白くないことがあった後では普段より堪忍袋の緒が切れやすいのです。これは、私たちは経験からそのことは知っていますが、それは、あらゆる種類のストレスは副腎皮質に働きかけて精神を緊張させ、人間を怒りっぽくするのです。〟
とあります。そこに至るまでの自分に落ち度があったこと、何かにもしかしたらイライラしていたのかもしれないことなど、色々と考えられるものの、その時は中々気持ちが切り替えられずにいました。
すると「どうしたんですか?」と。夕食の様子を見に来た調理の先生の声です。
これこれ事情を話すと、「なるほど。それは、私も同じ気持ちですね。」と一言。そして、その子のところへ行き、何やら話しています。
すると、すっと泣き声はやみ、あそびへと向かっていくその子の姿が横目で見えました。
遅番で一緒だった1歳児クラスの先生は僕と同い年の新人の先生です。食事の片付けも終わり、少し落ち着いたところで、必要があるだろうな、と感じ、その先生にもことの次第を話しました。
すると、「さっき、調理の先生が話してたよ。〝せっかくつくった料理を先生も汚いなんて言われたら嫌だし、おにぎりも投げないで食べて欲しかった〟って。そしたら、頷いてあそびに向かっていってたよ。」と教えてくれました。
また、「加藤くんの気持ちもよくわかる」、と言ってくれました。
僕は、とても気持ちが救われたような思いがしました。それと同時に、ここに、見守る保育が織りなすチームワークを肌で感じたように思い、先生方に感謝の気持ちでいっぱいになりました。
改めて、職場におけるチームワークは、保育士同士だけのものではないこと。また、新人も何も関係がないこと。多様性の糸が織り成され、補い合って一つの環境が生まれていくこと。そんなことを感じました。
臥竜塾ブログ
〝何かに腹を立て、それを家に帰って夫婦の間でそのことを報告するときに、その内容に同じように腹を立てて聞くと、怒りが増大してしまうことがあります。それを、その理由なりを冷静に考察することから助言をすると、怒りがおさまるということがあります。そこに、私は複数の人からの多角的な見方が必要であり、それを素直に聞く力が必要だと思います。〟
僕は変わっているので、その僕が素直かどうかは別としても、あの時関わってくださった先生方の言葉は、とても優しく、心に染みるものでした。
同時に、モヤモヤしていた気持ちはいつの間にかどこかへ行ってしまっていたのでした。
数分後、その子の方から近付いてくるから驚きます。
「絵本読んで。」
子どもの方が、何枚も上手で、僕は本当に未熟です。
僕は、声を大にして言いたい。見守る保育は、保育士としても人間としても未熟な人を、救い、育てる保育である、と。
(報告者 加藤恭平)
素晴らしい問題提起ですね。このような出来事に似た光景は日常的にあるにも関わらず、そこに疑問を持って問題視するというのは難しい事ですし、能力のいるところでもある気がしました。私自身も、その場にいたら叱ってしまっていたと思います。そして、印象に残ったのは、塾長ブログの「複数の人からの多角的な見方が必要であり、それを素直に聞く力が必要」という言葉です。多角的な意見を素直に聞けるかが、成長の鍵のようですね。
加藤さんが感じた思いを素直に他の先生と共有できるということが素晴らしいなと思いました。ついつい自分がしてしまった行為に対して肯定してしまうような理由をつけてしまうことがありますが、そうではなくどんな時でもその対応は本当にそれでよかったのだろうかと自分で考えたり、また他の人と一緒に考えることで、より保育が深まっていくように思います。そんな雰囲気があるというのはみなさんの中に相手の話しを聞くという姿勢がしっかりあるからではないかと思いました。私も同じような状況だったら叱っていたと思います。自分がした対応について疑問を持った時に、それを肯定して一人で完結させるのではなく「どうだったのかな」と一緒に考えてくれる存在がいることで、お互いに成長していけるのかもしれませんね。
ブログを見ながら、自分のことのように感じ、読みながら今日だけでなく今までの自分のしてきた保育を振り返る事が出来ました。同じような場面で、怒ってしまったことがあります。そのような時、自分は正しいことをした気になってしまいました。あの時はあれでよかったと考えている自分もいます。後から振り返ると、もっとこんな言い方もあったな、感情的になってしまったなと感じ、それと同時に、それを認めたくない自分もいるようで、未熟な自分をいつも悔います。
共感し合える先生方が加藤先生の近くにはいるということは、本当に良い雰囲気だと思います。自分自身を振り返る機会となりました。ありがとうございます。