絵本カードと貢献

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 以前、「絵本カード」という取り組みを報告しました。そのカードには、自分が読んだ絵本の題名と、読んだ日付を書き、その本は自分にとって「おもしろかった」か、「ふつう」だったか、「むずかしかった」かを、顔の表情で表されている絵を塗りつぶし自己評価するといった取り組みです。200冊を突破すると与えられる称号「絵本マイスター」も今では9人に増え、子どもたちが自ら絵や文字に親しんでいる姿が多く見られます。
 
 この取り組みの目的として、以前こう書きました。「文字を書くことが目的ではなく、絵本マイスターになってみんなに貢献することが目的です」。園の保育理念は「共生と貢献」とあります。社会を形成する一員としてのあり方を学ぶ上で、他のものとの共生を感じることが重要です。また、そういったよりよい社会にするための「貢献」を、喜びと感じる子ども像を目指しています。
 その「貢献」しようとする姿に、先日出会いました。
 
 ある数人の子どもたちが、「せんせー、セロハンテープかしてー」と言いにきました。「何に使うの?」と聞くと、「絵本カードなおすの」と。絵本カードは、“絵本カードファイル”に綴じてありますが、各々が記入する度にファイルから取り出して書くため、綴じ口がボロボロになっていたのです。私は、“自分の絵本カードを大切に使おうとしてくれているんだな”と思い、非常に嬉しくなりました。セロハンテープを渡すと嬉しそうに絵本ゾーンへ向かい、修繕遊びに没頭していました。
 
 20分ほどの時間が過ぎましたが、その活動は一向に終える様子がありません。自分の絵本カードを直すのには時間がかかっているなぁ…、違う遊びにでも切り替えたのかなと思って近寄って見てみると、自分の絵本カードだけではなく、なんと他の子どもの絵本カードまでも直していたのです。
 
修繕の様子
 
 修繕をしていたその子どもたちをよく見てみると、ほとんどが「絵本マイスター」の称号を得ている子どもたちだったのです。これまで、理念に沿った環境で遊ぶ子どもたちを見てきましたが、ここまではっきりとした形で私の目に飛び込んできた「貢献」は初めてでした。もちろん、この環境だけではありません。他にもある様々な理念に沿った環境のおかげで、この子どもたちの姿があります。「自分のだけじゃなく、みんなの物も…」といったように、社会に貢献することに喜びを感じていることに感動し、誇りに思い、同時に愛おしくなりました。
 
(報告者 小松崎高司)

絵本カードと貢献」への2件のフィードバック

  1. 先日、この絵本カードに読んだ絵本の題名を記入している子を見かけました。その時に、その子について小松崎さんが説明してくださり、その子に対する関わり方を教えていただき、「そのような柔軟な捉え方もあるんだな」と教わり、刺激を受けました。と、それはちょっとした思い出話ですが、友だちの絵本カードも直す子ども達の姿は素晴らしいですね。そこで子ども達の様子をしっかり感じずに「いつまでやっているの?」というような声をかけてしまったとしたらいつまでたっても大人はこのような子どもの姿に気がつけないかもしれません。まさに、子どもを信じている職員のみなさんの姿があるからこそ生まれる子ども達の姿でもあるのではないかと感じました。

  2.  素晴らしい子ども達ですね。それと同時に、絵本マイスターの理念が子ども達にしっかりと影響を与え、企画した保育者の想像を超えて感動をもたらす姿にまで発展していったこと。ここにとても驚きにも似た感動を覚えます。多くの成功者が共通して「成功とは過程である」と言います。絵本マイスターという取り組みが成功したという証が保育園の皆が絵本マイスターになれたということではなく、その道のりの中でこうして友だちのカードも手直ししてあげようとする〝貢献〟や〝奉仕〟の姿が生まれたことこそが、この取り組みの成功と言えるのではないでしょうか。
     これからも素晴らしいアイディアで、子ども達のもつ貢献したい気持ちや奉仕しようとする心をどんどん伸ばしていきましょう。年末の報告、お疲れさまでした。

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