今回から「SATイメージ療法」の具体的内容に入っていきます。
前回の内容にも書きましたが、がんやうつ病など、心身両面で深刻な問題を抱えている人は、前世代から伝えられたと思われるトラウマ情報や、胎児の時代に経験した不安や恐れの無自覚な潜在情報を抱えており、そうした潜在情報が様々な問題の質的な原因として作用していると考えられているそうです。
SATイメージ療法では、いくつもの異なる手法を組み合わせて、そうした潜在情報の中のイメージの意味を前向きなものに促し、そのことによってトラウマを克服してもらう。
そうした上で、セラピーを通してあるべき自分の姿を構築していくそうです。
ですので、SATイメージ療法では、「こうあるべき」という生き方を押し付けるのではなく、クライアント自身が満足するために「どうなりたいか」(自己変容目標)の気付きを促し、そういう自分になれるよう支援します。
そのためにはまず、脳内にある固着しているトラウマを払拭しなければなりません。
そこで、療法の事例が紹介されていたので、ここでも紹介させていただきます。
乳がん患者の(44歳)女性の場合、「少々のことで動じない自分になりたい」とのことで、そうなる自信度は65%しかないと答えたそうです。
これが脳内にトラウマ気質が作用している結果だそうです。
もしトラウマ気質が作用していなければ、そうなれると信じ前向きに行動し、少しのことでも動じないようになれるために予測し始め、準備するそうです。
そこで、自己変容を妨げる気持ちを「色」と「形」という視覚のイメージで表現してもらう。
視覚のイメージの方が右脳で処理しやすくなり、身体感覚のイメージにトランスフォーメーション(情報交換)しやすいからだそうです。また、こうすることで胎内のイメージも探ることができるのだそうです。
それに対するクライアントの答えは「暗い青、鋭角のある形」で、この色・形をイメージし続けるとどうなるのか聞くと、「呼吸が落ち着かない、冷える」とのことでした。
ネガティブなイメージを伝えてきたので、「どうなったらいいと思いますか?」と聞きます。
この質問をすることで、クライアントの意識を報酬系情報に切り替えることができます。
報酬系情報とは、心が安定する、あるいは嬉しくなる情報です。
ネガティブな状態が続くと本人の負担が増えてしまうので、すぐ報酬系に切り替えてもらうためだそうです。
前回の内容にも書きましたが、この方法はペシミストの短所である部分をオプティミストの長所である部分に変換することができるものではないかと思うのです。
人間誰しも落ち込むときがあります。その際にネガティブなイメージからポジティブなイメージのへ、嫌悪系から報酬系へと、「自分がどうなりたいか」、「自分がそのイメージになったときを想像する」ことが、自分の置かれている悪い状態から脱する1つの手がかりであることがわかりました。
そしてこの方法の面白いところは、方法さえ知れば自分1人でもできるのではないかと思ったのですが、どうやら違うようで、このようなネガティブで嫌悪系の情報に触れ、トラウマを抽出する手法が入る際は危険が伴うようで、担当者の補助がどうしても必要なようです。
しかし、クライアントの症状が軽度であると判断された場合、自分1人でもできる「未来自己イメージ法」と呼ばれるものがあるそうです。
簡単に説明すると、上記の例にあるネガティブな部分にはアクセスせず、報酬系情報にだけアクセスするという方法です。これを知ることで、自信が持てなくなったとき、心が疲れたときに効果があると思えたので、次回に少し詳しく紹介させていただけたらと思います。
(報告者 若林邦彦)
『「こうあるべき」という生き方を押し付けるのではなく、クライアント自身が満足するために「どうなりたいか」(自己変容目標)の気付きを促し』という文が印象に残りました。確かに、ネガティブになっている時というのは、目の前の事象にだけとらわれてしまい、その後「どうなりたいか」「自分がそのイメージになったとき」を考えていないですね。「どうなりたいか」という言葉を、目のつく場所に貼って、未来の自分をイメージしてきたいと思いました。
このような事例やその手法を知ると、人は変われるのだということを改めて感じるようでもあります。そのままの自分でいいと諦めのような、変われる訳がないという思い込みのようなものに支配されるのではなく、自分は変わることができると思い日々を過ごすことで、思考や行動を変えていけると信じることが大切ですね。「ネガティブな状態が続くと本人の負担が増えてしまうので、すぐ報酬系に切り替えてもらうためだそうです」とありましたが、このような意識の仕方を常に繰り返しながら、自分のものにしていきたいですね。