3月31日。日本では年度末のさらに末日ということもあり、来たる新年度という4月1日に向けて多くの人々が忙しさを抱える日でもあります。
しかし、そんな3月31日も365日の中の1日であり、それは誰かの誕生日でもあり、ある人にとっては記念日でもある訳です。保育園ではどうかというと、やはり4月1日という新年度に向けての準備が大詰めを迎える日でもあり、また新しい年度に向けての希望や不安をそれぞれの人々が抱えながらも、少し忙しなく過ごしているそんな日でもあるのかもしれません。
そして、保育園にとってはもう一つ特別な日でもあります。それは卒園式を終えた年長組の子どもたちの最後の保育の日でもあるのです。卒園式もまた、みんなとの区切りの日ではあるのですが、それでもどこか「3月31日までは保育園にくる子も多いから」とあまり寂しさといいますか、年長さんと最後の日という感覚にはなりません。しかし、31日は違います。本当に最後の日です。
そんなこともあって私は朝から年長さんを見かけると「小学校でも楽しんでね!」「頑張ってよ!」となかなかしつこいくらいに声をかけてしまっていました笑
そんな31日、夕方の出来事でした。
私は職員室にいたのですが、突如、職員室の扉が開きました。扉のところに目をやるとそこには多くの年長さんと、担任の先生が一緒に立っていました。担任の先生から今日で最後なので、先生たちみんなに挨拶に来ましたという趣旨の言葉が。そして、みんながぞろぞろと職員室に入ってきて、一人ひとり、先生たちの元へ歩み寄ります。
先生たちも握手をしながら、一人ひとりの子に、「いつも小さい子のお世話をしてくれてありがとうね」「笑顔が素敵だったよ」とその子の園での様子を振り返りながら、そして最後に「小学校でも頑張ってね」と声をかけていきました。
私も一人ひとりの子とハグをして、言葉を交わし、このなんとも言えない時間を過ごさせてもらいました。子どもたちが抱いている希望のようなものをその瞬間に少し感じることができたようなそんな気がしました。だからこそ、少し寂しいけど、なんだがとても幸せな気持ちになったのかもしれません。
何より、子どもたちへ声をかける他の先生方の姿を見ているとまた違った感動がありました。
子どもたちに対して、こんなにも真心を持って接している大人がたくさんいること。そしてそんな職場に自分がいることが嬉しかったのかもしれません。その空間には、花を一斉につけ始めた桜のような満開の笑みと、春の暖かさのような人の思いが溢れていました。
その後年長さんたちはそれぞれのクラスを回り、そして、園長先生の元にも行き挨拶をしていました。
また、あるクラスでは、先生と挨拶している最中に泣き出してしまう子もいて、そんな姿を見て、先生も涙してしまう姿もありました。ですが、それは悲しい涙ではなく、私には門出を祝う涙に見えました。
新たな年度が始まります。
誰もがどこか不安で、だけれど、それに負けないくらいの希望を持って飛び出します。
子どもたちは常に前を見ています、常に先を見ています。そこに楽しさを見出せる天才でもあるのかもしれません。私もまたそんな子どもたちを見習って、さらに楽しく過ごしていきたいなと思いました。
報告者 森口達也