最後は3,4,5歳児クラスです。(以下太字のところが塾長の考え方)
新宿せいが保育園では、3、4、5、6歳児は一緒に生活しています。それは、ひとつには、個人個人の発達の連続性を重視するために、生年月日で発達を決め付けるのではなく、個々の課題によって活動を促すためです。
たとえば、3歳児であってもはさみを使う能力は曲線切りができる子がいるかと思えば、5歳児でも、まだ、直線切りがやっとという子がいます。そんなときは、その子の課題は年齢によって決められるのではなく、個人の発達を理解し、把握をした上で課題が決められて行きます。子ども自ら、環境に働きかけるためには、その環境がその子の発達にあったものでなければなりません。そして、一人一人の子どもが自分の発達に見合った遊びやもの、人に自ら働きかけ、自発的に選べるために、大きな保育室に子どもの個人差の幅を受け止められる環境構成を用意していきます。
また、異年齢児で触れ合うことも大切です。少子社会では、なかなか家庭や地域の中ではそういう機会が少なくなっています。異年齢児で遊ぶときには、様々な工夫が必要になってきます。それが前頭葉を育てることにもなります。また、発達が遅い子に教えたり、手伝ってやらなければなりません。そんな遊びの中から、子どもたちは様々なことを学んで行きます。また、そんな異年齢児とふれあいも大切だが、同年齢の子ども同士で関わることも大切ではないかとの質問を受けることがあります。しかし、このような心配は必要ありません。たとえ、異年齢児が同じ空間で生活していても、たとえばゲームをするときなどは発達のレベルが同じ同士でないと楽しくありません。同年齢で遊ぶことも大切なときには、子どもたちは、自然に同年齢同士で遊ぶことが多いのです。
子ども達が自発的に活動を選んでいく場合、動線には十分な配慮が必要です。活動をする場所とその活動に必要な材料が置いてある場所が離れていたり、異なった活動をしようとする子ども同士の動線がクロスしてスムースな活動を妨げたりするような動線は見直します。活動をするための場所とそれに必要な材料をおおまかなゾーンごとに区分けしておくことが大切です。
ちょうど2年前の2015年から、保育園の定員が115名から171名に増えた時に、保育環境を見直すことになりました。それまではワンフロアで3,4,5歳の遊びの空間を構成していましが、定員が増える事で2つのフロアを使って保育することになり、試行錯誤している当時の担任の姿を思い出します。
また実際に子どもの遊んでいる姿を見ながら少し環境を変えてみたり、それこそトライ&エラーの繰り返しです。そうしていく中で子ども達の活動と環境がピタッと合った時が落ち着く環境なのでしょう。
(報告者 山下祐)
〝実際に子どもの遊んでいる姿を見ながら少し環境を変えてみたり、それこそトライ&エラーの繰り返しです。そうしていく中で子ども達の活動と環境がピタッと合った時が落ち着く環境なのでしょう。〟本当にそうだと思います。見学者の方から〝園舎〟を褒められることが多く、「羨ましい」と言われます。物的環境の最大の部分でそればかりはどうしようもできない、と思われる方も多いようなのですが、話していく内に、悩んでいる部分や、試行錯誤されている部分は同じであるということに気付きます。〝トライ&エラーの繰り返し〟で〝子ども達の活動と環境がピタッと合った時が落ち着く環境〟という山下先生の言葉の中には〝園舎を立て替えましょう〟という意味合いは少しもなく、むしろあるべき環境下、あるべき建物の中で、最大限に子どもにとっての環境を考えていきましょう、という提案であることがわかります。
現場の保育者は子どものことを考える仲間です。見学に来られ、環境に感動された方と共に〝活動と環境がピタッと合った時〟その瞬間について語り合いたいと思いました。