現在、塾長のブログでは「日本家屋」について考察されています。日本家屋には、こんなにも洗練されたデザインと知恵、そしておもてなしが存在しているのかと驚いてばかりいます。すると、次第にこんな感情が浮かんできました。
「日本家屋に住んでみたい」
日本家屋内を見学したことはあっても、実際にそこに住んでみたことがないのが、現代の若者たちではないでしょうか。地域差等も影響するかと思いますが、私たちの世代はなかなか「日本家屋」に親しんだことがありません。あっても、幼い頃とか、祖父母宅に行った際に体験したくらいでしょうか。現在、そのような環境で暮らしている人は素晴らしい体験ができていますね。そんな思いを抱いて出かけていると、こんなパンフレットに目が止まりました。
古民家付き農園「Corot」 http://www.corot.bz
ここでは農業体験だけでなく、かまどや囲炉裏、五右衛門風呂などを使って昔ながらの生活も体験することも、宿泊することもできます。また、この「Corot」を運営する峯岸祐高氏は、“食から地域を活性化する”という理念のもと、人同士のつながりを構築していく中で、物事のバランスについてこう語っています。
『51%〜60%』
新しくものごとを立ち上げる際に参考にする割合。
私達とお客様のバランス。
準備と開始後のバランス。
私達が作るのは51%〜60%まで。
すべてを作りこむやり方もあるけれどもたいていはオープンしてからのお客様との共同作業。
変化の激しい時代。
私達の考え方だけを詰め込むのではなくお客様の意見を入れる、または入り込む余地を大きく残して
その後の5年、10年を見据えて共に作るスタンスをとりたい。
最低51%作っておけば土台となる風船が飛んで行くこともない。
しかし60%を超えると入ってくる余地が少なくなる。
51%〜60%の調整はその時々で変わってくる。
こちらのヒト・モノ・カネ・情報のバランスとお客様や地域の相性やバランス。
こちらの人員なども少なくオープン後に頼れる方々がいればいっそ51%で勝負。
そうでなければ60%まで調整する。
なかなか伝わりにくいかもしれないけれども大切にしたいバランスをまとめました。
これを見て、「一隅のヒント」という塾長の言葉を思い出しました。運営側が全てを作り上げるのではなく、そこに訪れる人々と「共に作るスタンス」であるように、保育の中でも、保育者が全ての環境を用意するのではく、子どもたちで作り上げる・答えを探す・共生することができる余地を必ず残すということ、つまり、私たちは「一隅のヒント」を用意することが大切であるということです。それをパーセントでは、51%〜60%の完成度であると、峯岸祐高氏なりのちょうど良いバランスであるということなのだと思います。こう思った時、縁側や土間等の日本家屋のシンプルさには、他者が入り込める・クリエイティブになれるような「余地」が多くあるようにも思いました。また、地域とのつながりについてはこう言っています。
『ローカリズム』
地域主義(ちいきしゅぎ)とは、中央による画一的・普遍的なコントロールに対して、各地方の独自性や特徴を重視・尊重する考え方をいう。英語圏ではローカリズム(Localism)と一般に呼称される。
上記Wikipediaより。。
ローカリズムには様々な解釈がある。
私達も地域と密接に関わっているからこそ意識するワード。
でも解釈が少し違う。
ローカル+イズム=ローカリズムではなくローカル+リズム=ローカリズムでは無いだろうか。
ものやコトには必ずリズムがあるように地域にもリズムがある。
人の会話、お金の流れなど様々な地域のリズムがローカリズムじゃないんだろうか。
いつもの地域とちょっと違うリズム。元々のリズムに私達が関わることに寄ってリズムが変化することもあれば元々のリズムを大切にしたいこともある。
ローカル+リズム=ローカリズム
地域にも「リズム」があるというのはなんだか新鮮でした。大切なのはリズムに寄り添う事。同じように、子ども一人一人にもリズムがあり、それに寄り添って保育していくということなのでしょうが、それには人間性とか生きてきた環境であるとか、その場では変える事もできない環境が大きく左右することがあるように感じています。実際に体験できる素晴らしさというのは、何事にも変えがたい経験であると思っているからです。そういった個人・素材のリズムの部分を、意図的に活かす方向へと向かわせるのが、日本家屋でもあり、新宿せいが保育園であるようにも感じています。塾長の日本家屋についての考察から、保育の見方が増々広がっています。日本が増々好きになりましたし、「Corot」にも足を運んで泊まってみたいなと思いました。
(報告者 小松崎高司)
日本に住んでいいながら、本当の日本家屋というものを体験したことがあるだろうか?と考えると、私自身、体験したことことがないように思います。写真の「大広間」も、日本の家屋だとは分かりますが、ではそのような所に足を踏み入れたことがあるか、住んでみたことがあるかと言われれば、そうではありません。写真の大広間はとても開放的で美しい印象を持ちます。実際に体験することで感じることを体験してみたいですね。51~60%の完成度という話もおもしろいですね。藤森先生の言葉の一隅のヒントもそうですが、そのような姿勢は様々な場面で意識していきたいことだなと思いました。残された部分からうまれる柔軟性を大切にしたいですね。