Blue floor philosophy episode 20『他者への指向性』より

このエントリーをはてなブックマークに追加

「ねぇ、ちょっとこっち来て」

わいわい組(3歳児クラス)の子(以下わいくん)の手を引いてピーステーブルへ向かうらんらん組(4歳児クラス)の子(以下らんくん)です。

普段、喧嘩になると手の出やすい印象の二人だったので、らんくんがピーステーブルへ誘ったことも意外ながら、きちんと話し合いができるのかどうか、側で見守ることにしました。

「ねぇ、何か言うことないの?」

「ねぇ、何か言うことないの?」

らんくんが問います。きっかけはわからないのですが、どうやらわいくんが手に持っている車の玩具でらんくんの手を叩いてしまったようで、「ごめんね」その一言を引き出したい、そんな様子です。

「これが当たって痛かったんだよ」

「これが当たって痛かったんだよ」

それでもわいくんは黙秘。

途中何度かそのやりとりを気にした子たちが、関係のない話題を携えて入ってこようとするのですが

途中何度かそのやりとりを気にした子たちが、関係のない話題を携えて入ってこようとするのですが

らんくん、「関係ないからあっちに行ってて」と、二人での話し合いを継続します。

約2分間の問いかけと沈黙。流石にしびれを切らしたらんくんのとった行動が意外でした。

際中ながら外を向くわいくんの手を取り、

際中ながら外を向くわいくんの手を取り、

立ち上がって

立ち上がって

連れて行く先は

連れて行く先は

発端となったブロックゾーン

発端となったブロックゾーン

そして何も言わず手を離し

そして何も言わず手を離し

遊びを再開するらんくんでした。

どうしていいかわからない様子のわいくん

座り込むわいくん

ここから数分間、らんくんの遊ぶ姿をじっと見つめるわいくんと、

その視線に気付きながらも言葉をかけずに遊びを続けるらんくんの姿が

その視線に気付きながらも言葉をかけずに遊びを続けるらんくんの姿が

とても印象的に思えました。

ブログ『臥竜塾』2018年4月6日『他者への指向性』の中でこう書かれています。(太字をクリックすると塾長藤森先生のブログ『臥竜塾』にとび、この回の全文を読むことができます。)

「一方、仲間に向けられた攻撃性は0歳代の終わりに見られ始め、それも、たいていは物をめぐる争いの状況で生じます。たしかに、歩行期の子ども同士の相互作用の大部分は葛藤的ですが、それ自体、攻撃的なものではありません。またこの時期に幼児はことばでけんかしたり、向社会的行動によっていざこざを解決したりするようになると言われています。

葛藤や攻撃性が資源をめぐる争いの状況でまず生じるのは、系統発生的な記録とたしかに一致しているそうです。先に簡単に説明したいくつかの要因、コストや相手の戦略、資源の価値といった要因次第で、攻撃行動は非常に効果的な戦略となったり、非効果的でコストのかかる戦略になったりします。また、歩行期の子どもが一般的に他児のおもちゃを欲しがるのは、必ずしも不適応と見なすべきではないと言います。ホーレーは、歩行期の子どもの限られた交渉能力を考えると、おもちゃを「取る」ことは資源を獲得する効果的な手段であり、「事実、世界に対する健全な主張的アプローチであり、結果的に、成長し生存していくための物質的報酬を得ることにつながるであろう」と指摘しています。もっと、このことを知っておく必要がありますね。大人のような略奪ではないのです。」

らんくんの遊んでいる積み木の中に車の玩具があるあたり、わいくんが攻撃行動に出たきっかけは玩具の取り合いだったのかもわかりません。しかし、それは「大人のような略奪ではな」く、そして手を叩いたという行為もまた、大人のような暴力ではなく、「世界に対する健全な主張的アプローチ」であったのではないか、そのような解釈をすることができるように思われました。

そして、それを理解するかのようにらんくんは、やり返したり手を出したりせず、最後は姿勢でもって語ることを選びました。「話せないならもういい。ただもうさっきと同じことは困るよ。お互い遊ぶ時間もなくなるし、気を取り直して遊びを再開しようか。」そう伝えるかのようならんくんの遊び続ける姿から、わいくんはきっと何かの学びを得るのでしょう。

同時に、こうしたやりとりも出来るという一面を見せてくれたらんくんの成長を感じて、嬉しくなりました。

(報告者 加藤恭平)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です