Red floor philosophy episode 19『言葉を使う動機』『共同注意フレーム』『2017年ドイツ報告12』より

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先日、ぐんぐん組(1歳児クラス)の部屋で興味深い出来事がありました。

1歳児クラスの子が絵本を読んでいます。

1歳児クラスの子が絵本を読んでいます。

 字が読めるわけではないようですが、内容を覚えているのですね。

「カモメといっしょにポンポンポン♪」

「カモメといっしょにポンポンポン♪」

ページにある言葉と同じ言葉を楽しげに言います。

 「これだれだ?」

「これだれだ?」

このページでは、クイズを出してみたりして。

「これだれだ?」「なんだろね。」

「これだれだ?」「なんだろね。」

子どもの声に応じながら、その様子を傍で楽しそうに見守るお二人。写真左に写る先生より、ある時期からこの子がこの絵本をこのようにして楽しむようになったことを教えていただきました。

13年目に入られました藤森先生が毎日欠かさず更新されています『臥竜塾』ブログ2015年8月30日『言葉を使う動機』の中でこう書かれています。(太字をクリックすると藤森先生のブログ『臥竜塾』にとび、この回のブログの全文を読むことができます。)

「子どもは初期の言語的慣習をつけるかというと、どのように他者が特定の音声を使って、現在の共通基盤の空間内で自分の注意をある物に向かわせようとしているかを理解しようと努めることによって行なわれるということは確かなようです。共通基盤は、現在行なっている協調活動からトップダウンにもたらせることもありますし、他の形式のボトムアップの共通基盤によってもたらされることもあるということが考えられています。もちろんこれは、乳幼児がまず指さしやその他の身振りを理解するのを支えているのと同じ基本的な過程なのです。自分の知らない言葉を使っている大人と何らかの有意味な社会的やり取りに従事していなければ、子どもが耳にするのは他者の口から出てくる雑音にすぎません。子どもは、他者が自分の注意を有意味な方法で何かに向かわせていることを経験できないことになると言います。こうして初期の言語的慣習を学んでから次に、子どもは、今度は役割を交換しての模倣をすることにより、学んでいかなければならないと言います。つまり、他者が自分にしたのと同じようにして、学んだ言葉を他者に対して用いるのだと考えているようです。

 ここで、大人の模倣から役割交代をして、乳幼児は自ら言葉を使い始めると考えているようです。」

上記「どのように他者が特定の音声を使って、現在の共通基盤の空間内で自分の注意をある物に向かわせようとしているかを理解しようと努めることによって行なわれる」という部分は、『臥竜塾』ブログ2015年8月29日『共同注意フレーム』の中で、

「新たな語を学ぶためには、子どもは大人にとって目立つ物が何なのかだけでなく、大人が自分にとって目立っていると思っているのは何か、についても決定しなければなりません。もっと言えば、実は大人が子どもにとって目立っていると思っているだろうと、子どもが思っているだろうと、大人が思っている物…という風に続いていきます。子どもは、必要な共有基盤を想像する必要があったのです。」

このように説明されています。先生と絵本を読んできたことが、また、同じ絵本が家庭にあったとして、家庭でのそのやりとりが、この子にこうした姿をもたらした、と言えるかもわかりませんね。

そしてそれは、『臥竜塾』ブログ2017年7月8日『2017年ドイツ報告12』によって報告されたドイツの絵本ゾーンの紹介文と、とても似通うものを感じます。

スクリーンショット 2017-09-22 5.59.40

「「先生は、毎日私たちに本を読んでくれます。」というようにコメントにあるように、先生が読むときには、ソファーに腰掛けて、数人の子どもに本を読んであげています。日本では、子どもたちに本を読んであげるときは、お集まりの時などに、子どもたちの前に先生は立ち、みんなに絵を見せながら本を読み聞かせしている姿をよく見かけます。ドイツでも、そのようにしてみんなに本の読み聞かせをしている姿を見ることがありましたが、最近、オープン保育になってからは、見ることがありません。この絵のようにソファーに腰掛けて、数人の子に読んであげているか、子どもを抱っこして本を読んであげている姿をよく見ます。その違いはどこにあるのでしょう。それは、本を読むときの先生の意図が違う気がします。日本の場合は、子どもたちを一同に集めるとか、みんなを集中させようとするときの手段に使うことが多いような気がします。ですから、どの本を読むかは先生が決めて持ってきます。ドイツでは、多分、子どもが読んで欲しい本を先生のところに持ってきて、「これ、読んで!」とせがんで読んでもらっている気がします。しかも、コメントから見ると、それは毎日必ず行なわれているようです。」

とてもくつろいだ時間の中で子どもが持ってきた絵本を一緒に楽しむ。このような日常を創り出すことの大切さを改めて感じます。

そして、塾長のブログと合わせてこの動画を見返してみると、なるほどここにも子ども社会による育み、そしてそれを助長する保育者の役割があるということに気付かされました。

(報告者 加藤恭平)

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