1月19日(火)の生臥竜塾
今日は、ほぼ毎月行っています『臥竜塾生セミナー(保幼小連携)』の日でした。塾生の若林氏による発表があったので、今回の塾は、その報告から始まりました。
【若林氏】
・今回の報告は、保幼小の『違いと共通点』に重きを置いておこなった
・スタートカリキュラムや小1プログレムをもとに、課題を見つけていく
・発表後のディスカッションでは、各園の悩みが似ているように感じた
(例:校長先生が変わってしまう・学童の在り方・連携の仕方等)
このような報告の後、塾長による保幼小連携の補足がありました。
【塾長】
まず、保幼小連携において「交流と接続」とを区別しなくてはいけない。保育園と小学校間の異年齢同士がふれあう体験をするという「交流」。そして、それとは別に発達の連続性を途切れさせないための「発達の接続」。
昔、5歳児を連れて小学校体験へ行った際、5歳児と職員との関わりを見て、校長先生に「なんでこんなにやってあげちゃっているの?」と言われたことがある。例えば、動いていたら暑くなって上着を脱ぎ、その上着をためらいもなく先生に持ってもらうとか、鼻が出たら「先生、ティッシュ!」と子どもが言って、先生がティッシュを差し出す等、校長先生から見ると、子ども自らできることを“してあげすぎている”と指摘された。
そのような経験から、その地域の保育園・幼稚園・小学校で定期的に会合をして、それらの「円滑な接続」を目指した【保幼小連絡協議会】というものを設立した。具体的には、まず互いの施設や行いを「見合う」ところから始まり、それらを踏まえた円滑な接続のための「就学シート」というものを作った。また、定期的にイベントを行って子どもたちの発達の接続がされるような仕組みを考えていった。
小学生で人の話が聞けない等の問題に対しては、「発達の問題ではないか」と感じている。最近は、それは「乳児期の育ちの問題」ではないかと思っている。発達を順調に遂げさせることが重要。そのために、まずは、小学校にも、発達を理解してもらい「発達を接続させる」ことが大切。
根本には、子どもはもともと「社会的規範を守ろうとする」という前提がある。生活において、自分でメリハリをつけてTPOに応じた行動をしようとする存在であり、それを経験できるような環境である「茶室」を作った。そういった子どもたちを小学校へ送り出し、小学校の先生に「どんなことをしたら、こんな子になるのか」といった疑問を持ってもらって現場を見に来てもらうというやり方もある。
多くの親は、就学前に算数や漢字等の先取りをしてもらいたがるが、経験上(塾長は小学1年生の担任をもっていたため)、小学校で成績が良いのは、遊んできた子というのが多い。というのは、就学前にどこまで教えていたのかという点が大きく、小学2年生に学ぶことを就学前にしていた場合、3年生になると成績が下がっていくことが多いからだ。そこで、成績が下がっていく事に対して親は“本人(子ども)が勉強をしないからだ”と思ってしまう。しかし、問題は就学前教育の“詰め込み”が大きく影響しているのだ。つまり、幼児期にバリバリやらない方が、成績が上がるということであり、自らで考え行動することを体験する「興味・好奇心・不思議さ」といったものを多く感じることが重要。
“小さいうちはかわいそうだからのびのびと遊ばせようよ”でもなく、成績をよくするためには今しっかりと遊ぶことが将来の学びにつながるということを、科学的根拠をもとに説明できなくてはならない。同時に、園長は情緒的であってはいけない。科学的な視点から説いていかなければ、子どもを守っていくことはできない。
アメリカの経済学者であるヘッグマンの研究では、“ペリー幼稚園プログラム”の中で「非認知的能力」の重要性を説いている。発達を捉え、遊ぶ経験から得る学びの重要性がある。親のなかには、折り紙よりも字を教えてと言う人がいるが、字を覚えるためには、まず脳を活性化させなくてはならない。脳を活性化させるためには指先を動かすことが効果的であり、指先を使うのが折り紙。つまり、折り紙が字を覚えるためには必要であるという形で、折り紙を守っていくのだ。
人工知能を駆使するロボットの登場によって時代が変わっていくように、人間らしさが求められている。そういった面では、妻と「塾生は人間らしいよね」と話をしている。どうしてかというと、やたらと物を壊すから(よく塾長宅で使用している食器を割ってしまうので…汗)。失敗するというのは、人間しかできない。また、くじけない心とか、失敗しても頑張ろうとする心、立ち直る力とかも同等。ゴリラの研究によれば、それらの力は、3つの要素から成り立っているという結果がでた。一つは「ポジティブである」こと。二つ目は「周りから愛されている」こと。三つ目は「自分が好き」ということ。それが、人間では「オプティミスト」という位置づけでブログでも何度か考察している。
小学校における「スタートプログラム」「学習指導要領」を把握し、乳幼児教育の世界からの具体的な仕掛けが必要である。
以上のように、塾長の考察は続きました。そして、本日参加した外部臥竜塾生の森口氏からも、自園で見られた子どものエピソードを話してもらいました。
【森口氏】
最近、塾長の影響でスターウォーズが好きになったこともあり、園でもそれに関連する話を子どもとしている。ある日、子どもが、新聞に掲載されていたスターウォーズの広告を嬉しそうに見せにきてくれた。そして、一昨日には、スターウォーズの服を見ていた子どもを連れて、“先生これ見て!”と教えにきてくれた。自分には興味ないことでも、人が好きなものを理解して、その人を喜ばそうとしているのだなぁと思って感動した。
それに対して、塾長は「自分に利益がないのに子どもって人に教えたがるんだよね」と、話します。それは、塾長のブログでも〈最近の赤ちゃん研究〉という題で取り上げられています。
http://www.caguya.co.jp/blog_hoiku/archives/2015/02/最近の赤ちゃん研究.html
「赤ちゃんは教えたがり」であるということが研究で明らかになっています。
このようにして、たいへん盛りだくさんな生臥竜塾は終了しました。最後に、メニュー紹介をして報告を終わりとさせて頂きます。
(報告者 小松崎高司)
小学校というと保育園にいると身近ながらも、その中はわからないことが多いですね。ただ保幼少の連携会議などに参加すると、その校長先生の考えが大きく影響されているというのは感じます。卒園児を自信をもって送り出す。そんな意味でも小学校側と一緒に「非認知的能力」といったこれから先に役立っていく能力を大切にしていきたいですね。
参加させていただき、ありがとうございました。楽しく、刺激的な時間でした!小学校との連携における「交流」と「接続」の違いについては考えさせられました。「交流」を「接続」と思っている部分もありました。それが違うということを教えたもらったことで、取り組みの内容もまた意識が変わっていきそうです。「なんで、こんなにやってあげちゃってるの」という校長先生の言葉がありましたが、帰ってから子どもたちと一緒にいると「やって」というようなことを言ってくることが多いように感じるようになりました。ですので、自分たちでできそうなことに関しては「自分たちでやって」というように意識するようになりました。知らず知らずのうちに大人がやってしまっている部分が結構あったのかもしれないなと気づかされました。そして、アクバー提督!!
大変勉強になります。森口先生が外部塾生なのも驚きですね。月日の経過の早さを感じました。
様々に学びを得るこの度の報告ですが、「情緒的であってはいけない。科学的な視点から説いていかなければ、子どもを守っていくことはできない。」とても印象的でした。子どもたちを専門的立場から守ってあげられるのも保育者だけで、そのためにも専門的な知識、科学的な見解を頭に入れ続ける努力を怠たるべきはないことを改めて思いました。