5月30日(火)の生臥竜塾
まずは、先週、塾長が行った出張報告を同行した助手の森口氏からしてもらいました。
◯鹿児島出張
「藤森先生といると、有名人との遭遇率高いっすね!」という言葉で塾は始まりました。行きの飛行機でプロスポーツ選手と出会い、運の強さ・引きの強さなどを感じたそうです。そして、鹿児島では展示会の講演でした。その中でも、森口氏が印象に残った話として、「乳児期は、脳の入れ物を大きくする時期」ということを話されていました。何を詰め込むかではなく、今後脳に入る情報量のために、器を大きくするための時期が、乳児期の役割としてある。その結果、年齢が3.4.5歳と上がっていくにつれて、「次はその入れ物中に…」という作業ができ、その後の教育につながっているのだそうです。そのために、0・1・2歳の時期が重要なのだなと理解できたそうです。
また、鹿児島では西郷さん縁の地「維新ふるさと館」や、薩摩スチューデントの歴史に触れた「薩摩藩英国留学生記念館」の話になりました。まずは薩摩スチューデントの話です。ことの発端は「生麦事件」だそうです。この生麦というのは、神奈川県横浜市鶴見区の地名である「生麦」からきています。この地で、島津光久の行列を青年英国商人リチャードソンら4人が馬で横切ったため、薩摩藩士が切りつけます。それにより、「薩英戦争」が勃発します。
結果は敗戦となってしまうのですが、英国と薩摩の国力の差や、そこでの経験から学ばなくてはいけない、「それを見習うために留学生を派遣すべきである」として、諸外国へ19名の留学生を派遣するのです。それが「薩摩スチューデント」です。最年少は14歳。当時、幕府は鎖国をしていたということで、留学が見つかれば重い刑が罰せられます。そのリスクを冒してまでも行動した、その学ぶ姿勢「死を覚悟してまでも、国のためになんとかしようとした集団に感動した」「強い志を持って行った人たちが当時いたからこそ、今の日本があるのかもしれないと思った」と森口氏は言っていました。また、当時、1人あたま2700万円の留学金がかかったということで、それを許した島津の大名の懐の深さや大胆さに塾生一同驚きでした。
また、留学生たちは、2週間ほどで英語を習得するなど、その興味関心度の高さにも驚いたそうです。塾長も、「向こうの評価が変わっていった」「英語もあまりしゃべれない、留学生たちが驚いてばかりいる、ということで日本という国はよほど野蛮なのだろうと思っていたが、ひと月もしないうちに現地の人を教えるくらいになってしまう。日本人ってこんな優秀な民族なんだと、現地の人みな感心するんだよね。」と付け加えます。帰国後、みんな日本を作る人材となっていったということで、人づくりにはお金がかかるのかなと個人的に思いました。塾長は常々、乳幼児期への国の投資の低さを危惧しています。そこにお金をかけるということが、将来の国に対する貢献でもあるということを、薩摩スチューデントの話から感じる事ができました。
続けて、薩摩の教育「郷中教育」についても話します。「郷中教育」とは、方限(ほうぎり:地域のこと)ごとに6歳から15歳くらいの少年が集まりであり、そこに15歳以上の先輩がついて行なう自習システム。先生がいない教育であり、年上が年下を教える。午前中は勉学をしながら、午後は実践(木刀や魚釣り等)方式。教師がいない中で、年長者が年少者を教えるという教育の仕組みがありました。気になってみたので、調べてみると面白い情報がありました。
薩摩の子供は、まず早朝にひとりで先生(主に近所のインテリ武士)の家に行って儒学や書道などの教えを受けるのですが、誰を先生に選び、何を学ぶかは、子供が自分で勝手に決めるのだそうです。そして次は子供だけで集まって、車座(くるまざ)になり「今日は何を学んだか」を各自が口頭で発表します。決まった校舎や教室はなくて、毎日、子供が順番で、地域の家に「今日はこの家を教室に貸してください」と交渉するそうです。
「社会性も身につきますよね。何より大事なのは、皆の先生がバラバラなことです。思想が統一されないし、話す本人は復習になるし、口伝え・耳聞きによって、知識を皆で効率よく共有できる。ちゃんと理解してるか、親よりも厳しく仲間同士でチェックし合います。」と、『武士の家計簿』の著者でもある磯田道史氏は言っています。
塾長が提案する見守る保育でも、異年齢の関わりを大切にしています。「教え教わる」経験から、社会性や多様性、そして能力の定着を目的としています。まさに、見守る保育は「郷中教育」の要素を含んでいるのですね。
このように、森口氏から出張報告をして頂きました。
そして、先週番組で放送された「世界が驚いたニッポン!スゴ〜イデスネ!!視察団」の『保育園・幼稚園編』の保育園部分を観賞し、次週は幼稚園部分を見る予定です。
そして、今回のメニューは、塾長が先日の出張で行かれた仙台土産の「牛タン」メインの牛タンとろろ定食です。各地の名産を食べられる幸せをいつも感じています。
(報告者 小松崎高司)