8月3日の塾報告をさせて頂きます。今回も、完全ZOOMによる塾の開催となりました。
この日は複数の話題について皆で議論を行いましたが、奇しくも「職員間でのコミュニケーション」や「意識の共有方法」といったポイントで通底しているものでありました。ここでは、最も時間をかけて話し合った 「新しい取り組みにチャレンジしようとする職員を育成するにはどうしたらいいか」というテーマについて報告させて頂きます
話題を提供くださった管理職をされている先生から、「前例のない試みに挑戦しよう!」と促しても中々反応してくれない職員の方が一部でいる、というご経験を語って頂きました。方針をはっきりと示したり、膝を突き合わせて話し合ったりなどのアプローチはしたものの、その職員の方がこちらの期待している行動をとるには至らなかった、といったお話でした。
そのエピソードを聞いた園長先生や塾生から、様々な意見が出ました。
園長先生からは下記のような旨のご意見を頂きました。
・教師が生徒にチャレンジを促す際、日米でアプローチの仕方が違う。
日本では「おもしろそうだから、やってごらん」
アメリカでは「おもしろそうだから、一緒にやってみよう!」
アメリカの教師のように、自分も一緒に取り組むというスタンスで接してみたらどうか?
・人前で失敗したくない、という気持ちを持つ若い世代は多い。ある大学の先生は、まず自ら生徒の前でわざと失敗してみせて、学生をリラックスさせている、という話もある。
・その職員がやらないのであれば、それを管理職の自分がやってみせる。
・園の方針を常に発信し続けることが大切である。個々の考えもあるから行動を強制することはできないが、方針が浸透して行動が変わることもある。言わなければわからないので、こちらの要望を言い続ける。
・目指す方向を示す意味で、行っている試みが世間で評価されていることを伝える。
また塾生からは下記のような意見が出ていました。
●柿崎先生
・小さな規模での試みから始められるようにしたら、失敗を恐れずに挑戦しやすいのではないか?
●本多先生
・違う役割の職員達も巻き込んで一緒にやるのが良いのでは? とりあえずやってみるのが大事。
●森口先生
・何も働き掛けをせずにいて、周りとの差を本人に気付いてもらうという方法もあるかもしれない。
・相手の思いを聞いてあげるだけでも違うかもしれない。理解し共感するスタンスをこちらがとることで、相手もこちらの意見を聞き入れてくれるかもしれない。 信頼関係ができさえすれば、というろころはあるように思う。「自分たちは肯定されているのだ」という気持ちを持てるようなコミュニケーションが大切。
●西田先生
・どうしても波長が合う、合わないという人がいる。相手と波長が合う人や話しやすい人に頼んで働き掛けてもらう、という方法はあるのではないか?
・もし職員が失敗した場合、管理職の自分も一緒に失敗したというスタンスであることは必要。
山本五十六の有名な言葉で「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」というものがあります。いかに「人を動かす」ということは難しいことなのか、この言葉は示しているように思えます。この度、皆さんのお話をおききしていて最も強く感じたことは、そういった際のコミュニケーションの難しさです。職場にて信頼関係を構築したり、意識を共有したりすることは、良い仕事をするために必要なことかと思います。が、そのためにどのような意思疎通を行うべきなのか、そこに明解な答えはないものなのだと感じました。ましてや「人を動かす」にはいろいろなアプローチがあるものと、皆さんの意見をきいて思いました。
そんな中でもポイントとなることは幾つか存在しているものと感じました。「相手の話をよく聴こうとするスタンス」「まずは自分がやってみせること」「周りを巻き込んでいくこと」といったことが必要なのではと感じました。また最後に森口先生が「この先にある『ワクワク』を提示する」と仰っていたのですが、そういったことも「人を動かす」には特に大切なのではないかと思いました。
また最後に私から「こどもの視展」というイベントに行ったことを報告させて頂きましたので、こちらでも紹介させて頂きます。
「こどもの視展」は、東京青山にある「ITOCHU SDGs STUDIO」にて、7月22日から9月19日に行われているイベントです。
「こどもになって世界を見てみよう」がメインコピーで、こどもが体験している世界を大人も体験できるというイベントです。実際体験したもので、印象的だったものをいくつか紹介させて頂きます。
一つは「2歳の朝食」というコーナーです。パンフレットの記載を以下に引用させて頂きます。
・2歳児から見た朝食風景を再現した体験展示“2歳の朝食”。
すべてが大人の約2倍サイズのものを日々扱っているこどもたちの大変さを体験いただきます。
大きなテーブルの上に、重い牛乳パックとマグカップが置いてあり、それを触ったり持ち上げたりできます。子育てをしていると、自分の子どもがコップに注ぐのを失敗する等した際、どうしてもイライラしたり怒ったりしてしまうことがあります。が、これを体験してみると、子どもがそういった「失敗」をしてしまうことは全く無理からぬことであるということがよく理解できます。大人の為に作られた、大きくかつ重い過ぎるものを扱うことが、子どもの日常であるということを実感しました。
二つ目は「4mの大人たち」というコーナーです。
・私たちがこどもになったとしたら、大人は4m級の巨大生物。
そんな巨大生物に見下ろされて怒られた時の怖さをVR映像“4mの大人たち”でぜひ体感してください。
これはVRゴーグルを装着することで、子どもの視点を疑似体験できます。子どもから大人がどう見えているのかということを実感しました。またその「4mの大人」のCGは怒っており、子どもにとっての大人の大きさが更に強調されているように感じました。
三つ目は「大人ランドセル」です。
・大人ランドセル
何年も問題視されている重すぎるランドセルを大人サイズに換算して再現した“大人ランドセル”。その体感重量はなんと約18.9kg!
背負ってみれば、こどもたちの苦労がわかります。
自分の子どもが月曜に学校へ持っていく荷物を持ってみて、愕然としたことがあります。このコーナーで大人サイズに換算したものを背負ったり手にしたりしてみて、更に子どもが感じている大変さを理解しました。
本イベントを通じて感じたことは、「世界は大人のためにできている」ということです。社会のシステムや身の回りの多くの物は、大人が使いやすいように作られたものであると感じます。子どもの立場になって考えれば使いづらい物が殆どなのではないでしょうか。そんな世の中で、保育をする環境はそうあってはならないと思います。保育者として保育の空間をつくる際、子どもの心や体のことを理解し考えながらすべきであると強く思う次第です。
この日は上記以外にも、行事のアップロードについてや職員間で行うクラブ活動について等、様々な話題が上がり、大変学びのある塾でございました!(報告者 小林純平)