「さわってみて」をやってみた

以前、塾長のブログで、科学体験活動の具体的な方法として「さわってみて」といった展示コーナーの例が出されていました。さっそく、子どもたちが実際に手に取り、考え、試してみることができる環境を用意してみようと思いました。

 

「これは何でしょう?」

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帰りのお集りで、これを子どもたちに実際に見せ、問題提起をしました。子どもたちはというと「……?」です。誰一人、知っている子どもはいませんでした。次に、「さわってみて」コーナーの説明をしました。

 

「この箱の中に入っているものはいつでも触っていいです。自分たちでいろいろ触ってみたり、匂いを嗅いでみたり、よーく見たりして、これが何なのかを考えてみて下さい!」

 

そして、子どもたちに十分な考える時間を与えるため、答えは明日の朝のお集りの時に言うと伝えました。

 

すると、子どもたちはよく観察して、色々試していました。穴があいていることに気がついたり、耳に当ててみたり、鼻に付けてみたり、息を吹きかけてみたり…。すると、考えを言い始めました。「アヒルのやつじゃない?」「豚の鼻かな?」「口からフーってしたら、少し音が鳴ったから笛じゃない?」、また、その物体をジーと見つめて、ただただ無言で考え込んでいる子どももいたりと様々です。

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次の日になりました。

「これはなんだと思う?」と言うと、笛じゃない?と言った子どもの案が採用されたようで、数人が「ふえ〜!」と答えていました。

そうです。これは笛なのです。しかし、笛は笛でも【鼻笛】といって、鼻と口に押し当てて、口を開いたまま鼻息を出すと音を奏でることができる楽器なのです。実際に鼻と口に当てて音を鳴らすと、こんな音が出るのかと驚いていました。音を鳴らすには、少々コツがいります。この微妙な難しさが、子どもにはいいのかもしれません。その後も、いい音がでないか試していました。

 

「さわってみて」という環境が改めてそこにあることで、物に触れるといった行動がスムーズに行われ、普段何気なく触っている物でも、新鮮な気持ちや何か自分が知らない世界があるのかもしれないといった感覚になるのではとも感じました。なので、今後も子どもたちが未だ触れたことがないような物と同じく、目にはとめるけど触ったことがないような物をその箱に入れてみようかと考えています。

 

(報告者 小松崎高司)

「おりん」(アドバイス)

保育に使っている「りん」を紹介しましたが、この「りん」は、家庭では仏壇の中に小さいものがどの家庭にもあるものですし、お寺に行くと、大きな「りん」が置いてありますので、私たちには意外となじみのあるものです。園では、片付けの合図に使いますが、もともと仏具として使うときにも、勤行の際に、経典などの読誦の開始・区切り・終了の合図として打つことが普通です。ですから、お片付けの合図として使うことは間違っていないですね。そして、それは、「お集まり」の始めの合図でもあります。

こんな逸話が残っています。よく、足の速いことを「韋駄天走り(いだてんはしり)」という事があります。これは、足の速いことを指しますが、俗説であるという話もありますが、一般的には韋駄天は快足で有名です。「はい、これから○○で読経が始まりますよ!」 という合図で「りん」をチン、チーンと2回ならすと、この音を聞いた韋駄天が、足が速いことを活かして、仏国土を駆け巡り、関係諸仏に 「○○に集合してください!」 と伝え歩きます。すると、関係諸仏がそこに集まり読経を開始します。その読経が終わると、こんどは、「はい、これで終了します」という合図にチーンと1回打ち鳴らして、諸仏は仏国土に戻っていったという説があるようです。

 

この私たちにとってはなじみのある「りん」を、ドイツに行くと、小学校の教卓の上、幼児施設には教材として置かれているのを見たときにはびっくりしました。

ドイツの小学校の教卓

ドイツの小学校の教卓

そして、ドイツの園長先生が、自慢げにそれを鳴らして見せて、子どもたちがその余韻を楽しんだり、その振動を感じたりと保育に使うことを説明しました。私たちは、それを見て、「これは日本ではよく見かけるものなのに!」と思ったものですが、どうもドイツでは、保育教材のようです。

今年、ドイツに行った時に、その「りん」の教材としての使い方の本を保育室で見つけました。そこで、ドイツの本屋で注文して、帰りまでに取り寄せ持って帰りました。そこには、いろいろな使い方をする写真がたくさん掲載されていました。ドイツ語は読めませんが、写真から使い方を知ることはできます。(藤森)

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中に水をはって

中に水をはって

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どこから音が聞こえるのでしょう?

どこから音が聞こえるのでしょう?

余韻

園でお片づけをする際にこんな物を鳴らしています。

おりん

おりん

これを鳴らすことで子どもたちは片付けの合図だと気付き「お片づけだよー」とお友だち同士で教え合っています。
このおりんは音の余韻が非常に長く、しばらく音が鳴っています。よく子どもたちは遊びに夢中になっていることがありますが、この長い余韻があることでこの合図に気づくことが出来ます。かなり大きい音も出ますので、より気づきやすいようです。また子どもたちに片付けの時間を前もって知らせておくことでその時間になった時に自分たちでおりんを鳴らし片付けを教えてくれています。

お片づけ以外にもこのおりんを使う時があります。
それは子どもたちが落ち着かない時や集中してほしい時です。落ち着かないときにおりんを鳴らすことで子どもたちはこの音に耳を傾けます。耳を傾けた際に「どのくらい長く音が聞こえる?」など質問するとより音に耳を傾けていきます。「聞こえなくなったらそっと手をあげて」と言ってみると、子どもそれぞれ上げるタイミングが違い面白い結果がでる時もあります。集中してほしいときも同様にこの余韻に耳を傾けてもらってから活動をすることで少し集中力が高まるように思います。

最近ではお坊さんの保護者(お父さん)がいるので、正しいたたき方を職員が教わっています。笑

うちの園では幼児クラスはおりんを鳴らし、2歳児クラスは銅鑼を使っています。2歳児クラスになると少し余韻が短くなるものの様々な時に使っています。片付けもそうですが、ご飯の配膳で使うこともあります。

銅鑼

銅鑼

こういった物を使って実践を行っています。

(報告者 本多悠里)

声であそぼう

 人間の声は、のどの奥にある「声帯」というひだが震えることによって作られ、空気を振動させながら伝わっていきます。同時に、離れている物をふるわせることも出来ます。以前TV番組で、声でワイングラスを割ることができるか実験していました。その結果に衝撃を受けた記憶があります。保育の部屋にも、目に見えない「声」を、遊びを通して直接「目」で見ることができないかと考えていると、本屋にあった総合学習本の中に、「声であそぼう」というページがありました。

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 これは、声の振動でモール人形を踊らせる手作り玩具です。用意する物は、ボウル・ガムテープ・黒いポリ袋・モール・ハサミです。これらを使って玩具を作ります。作った物を科学ゾーンに置き、実際にやってみると、子どもたちは驚いていました。そして、自らやってみたいと言って、やってみます。しかし、なかなかモール人形は動きません。そのうち、一瞬ですがモール人形が動くと「うごいたー」と言って喜びます。不思議を体験した瞬間です。そこからこつを掴んで、動きやすい声と動きにくい声があることに気がついていきます。大人から見ると、声帯が細かく振動している声と大きく振動している声ということになると思います。子どもたちは、いろいろ試しながらそれを感覚で理解していきます。

 

 また、これはまだやっていませんが、ポリ袋の膜の上で塩(アジシオ)を踊らせると、模様を描くことが出来るそうです。この振動で作り出された模様を「グラドニ図形」といいます。ポリ袋の上でも、大きく振動する場所と、ほとんど振動しない部分があり、振動しない部分に塩が集まって模様が作り出される仕組みです。1787年、ドイツの物理学者エルンスト・グラドニが発見しました。ある記事では、その図形を「神が音に託した指紋」と表現していました。面白いですね。確かに、グラドニ図形を検索してみると、周波数の違いによって様々な模様が描かれ、非常に神秘的な物を見ているかのようになります。

 

 グラドニは、どのようにこの図形が作られることを発見したのでしょうか。もしかすると、声で何かが動くことを知ったのがきっかけとなったかもしれないと、そう感じさせるような、子どもたちの姿でした。

 

(投稿者 小松崎高司)

レモン電池

 以前、子どもに「電気で動く物はなんでしょう?」という質問をしてみました。「とけい」や「テレビ」という返答が出る中、驚くほど現代的な物もあがりました。それは、「スマホ」や「車」です。子どもたちにとって、それらは日常になりつつある物なのでしょうね。

 

 そこで、それらは“レモン”でも動くかもしれないという話をして、塾長がドイツ土産として子どもたちに買ってきてくれた『レモン電池実験セット』を使って、時計が動くかを子どもたちの前で試してみました。子どもたちは、実際に時計が動き出す様子を見て、「うごいてるー」や「なんでー?」と、不思議そうな顔つきで口々に言っていました。私も仕組みが分からなかったので、「なんでだろうねぇ」と言ってしまいました。

 

 後日調べてみると“レモン果汁は、イオンが含まれている電解質であり、この電解質にイオン化傾向が異なる2種類の金属をいれると金属の間に電圧が生じるため時計が動く”といった感じだそうです。説明文を読んでも、頭に「?」が浮かびました。しかし、私も含め、「不思議だなぁ」に出会える場が心地よいのは、理解できることだけでは、きっと、人生つまらないといった思いを本能的に感じているからかもしれません。いつでも、好奇心旺盛でいたいと思った出来事でした。

 

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IMG01892(投稿者 小松崎高司)

科学ゾーン認定証

私の園では最近科学ゾーンに認定証というものを作りました。

その認定証がなければ科学ゾーンでは遊べないのです。
遊びの面でまず、他のゾーンでしっかり片付けを最後までできているか、
用意してあるおもちゃを上手に使えているかということを前提にし、それらを
しっかりとしている子に
『あなたは科学ゾーンで遊んでいいですよ』という証をあげています。
認定証

認定証

この認定証には自分がやった物は責任を持って片付けてほしい、
大事におもちゃを使ってほしいという意図性も含まれています。
今はその認定証がほしくて片付けを頑張ってみたり、お集りの際に
ピシーっとかっこ良く座ってみたりとアピールの仕方がそれぞれで
面白いです。生活面でも影響が出てきているように感じます。
認定証をもらった子たちは非常に嬉しそうに科学ゾーンにある環境に働きかけ、
自発的に遊びに取り組んでいる姿が見られます。
具体的には虫眼鏡や磁石や望遠鏡、万華鏡、ペットボトルに水を入れ、トルネードが見れる
オモチャ、小さい切り株、貝など触って楽しむものなどが用意されています。
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またこういった実験があるというのを掲示しています。
必要な道具、その道具をどう使って実験を行うのかという説明が
あるのでそれを見てやります。
白衣や、ゴーグルなども用意してあるため、気分は研究者です。笑
これやりたいといって物を用意してあげることで、書いてある実験の
他にも思いついたことをやってみたりという好奇心が出て来て目を輝かせていました。
まさにそれが実験といった感じで見ていてわくわくします。
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認定証という環境を一つ置くだけでもこんなに子どもの姿が
変化し意図していたこと以上の子どもたちの動きが見られます。
その行動を見て振り返り、より良い環境設定を求めていきたいと思います。

(報告者 本多悠里)

色水作り

ドイツの園で見た、色水作りです。やりたい子が、自分で道具を出して取り組みます。

自分で作りたい色の試験管を決めます。

自分で作りたい色の試験管を決めます。

 

 

 

 

 

 

 

 

3色の色水からスポイトで取り出し、それを混ぜて、見本の色に近づけます。

3色の色水からスポイトで取り出し、それを混ぜて、見本の色に近づけます。

丸いテーブルを囲んで、ほかの子の作業を見ながら進めていきます。

丸いテーブルを囲んで、ほかの子の作業を見ながら進めていきます。

 

このような科学的な取り組みは、日本ではあまり見かけません。しかも、このような取り組みを自発的に行うことができる子どもの発達に感心します。