12月15日(火)に、臥竜塾生による年間講座の「文字・数・科学」を担当させて頂きました。その日に至るまで、子どもたちの普段の姿の中に、どんな文字・数・科学があるのかなぁなどと思いながら、保育をしていました。
ある日の朝、1歳児が5歳児に向かって「よんで」と絵本を渡している姿を見つけました。ふとカメラを構えていたのは、「文字」についての中で、文字への関心・意味を読み取れる力を育むためには「文字を読めないうちから絵本を読み聞かせる」ことが大切であると学んでいる最中であったからなのか、それとも、その2人の間にある心地良い空気を、無意識に感じ取ったからなのかは分かりませんが、その2人の関わりの中で、印象に残るような姿が見られたので報告します。
まず、「よんで」と絵本を渡された5歳児は、テーブルの上に絵本を平面に置いて、相手からでも見えやすいようにして読みきかせを始めました。しばらくすると、5歳児がおもむろに絵本を上下逆にしたのです。つまり、1歳児側から、文字や絵が見えやすいように「配慮」したということです。それまでは、文章もスラスラ読んでいましたが、上下を逆にしたという事もあって文字が逆さまになり、読みづらくなってしまいました。読み聞かせは「ば…すは…み…ちを…すす…みます。」といったような、少々つたない言葉になっていましたが、1歳児は変わらず5歳児が発するその言葉に、真剣に耳を傾けていました。
1歳児が絵本の文字を目で追っているという事はないかもしれません。また、1歳児は絵本を逆さに見ていても気にとめないかもしれません。しかし、5歳児は、自分の読み聞かせのスピードや正確性が劣るということよりも、相手に対する「思いやり」を優先したのだと思います。
塾長の【こくごのはじまり】という本の“あとがき”にはこう書かれてあります。
『小学校へ行くと、すぐ「読み」「書き」という「こくご」の授業が待っています。机の上での学びの前に、幼児期にもっとやっておくべきことがあるのではないか、というのが本書を書こうとしたきっかけでした。言葉を話したり書いたりすることは、自分と他人の間の「関係をつくる」ということです。ただ単に、口先だけのもの、文字づらだけのものではなく、心と心を交流する営みなのです。あいさつをかわすこと、絵本を読むこと、けんかをすること、手遊びを歌うことなど、日常生活の折々を、「こくご」の基礎を養うよい機会として生かしてください。』
まさに、文字や言葉を越えた「心と心を交流する営み」が、そこにあったように思います。
(報告者 小松崎高司)
まさに相手のことを思ったからこその読み方ですね。『言葉を話したり書いたりすることは、自分と他人の間の「関係をつくる」ということです。ただ単に、口先だけのもの、文字づらだけのものではなく、心と心を交流する営みなのです。』という言葉に改めて保育を考えさせられました。文字を読めること、書けること、というできることについつい目がいってしまいがちですが、それをさせてできるようにするのではなく、心と心の交流を介して自然とそういうものに触れるという工夫を私たち保育者が認識していないといけませんね。そう思うと、他者と関わるということは様々な力を育むことにつながりますね!