牛タンが招いた偶然

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6月2日の臥竜塾の報告をさせていただきます。

今回の臥竜塾は、色んな偶然が重なった回で、偶然好きの私としては、1人で興奮していました。まずは、私の偶然好きの説明をしましょう。

世の中には、こんな偶然があります。アメリカ大統領で、リンカーンとケネディという有名な大統領がいますが、この2人に関する偶然です。リンカーンが下院議員に初当選したのは1846年で、ケネディが下院議員に初当選したのが1946年と、ちょうど100年後なのですが、なんとリンカーンが大統領になったのが1860年で、ケネディが大統領になったのが、1960年と、またもや100年後なのです。これくらいの偶然なら、ありそうなことなのですが、さらに色んな偶然が生まれているのです。2人とも金曜日に妻の前で暗殺されており、リンカーンの秘書の名前はケネディ、ケネディの秘書の名前はリンカーンと言うのです。これは1つの例ですが、私の偶然好きというものが、分かっていただけましたでしょうか。

すこし話がずれましたが、今回の臥竜塾でも色んな偶然が重なったのです。5月30、31日と塾長と仙台に出張に行っていました。仙台と言えば、牛タンだということで、今回の臥竜塾のメニュー担当だった私は、メニューを牛タンにしようと思い、買って帰りました。どうせなら、仙台で食べた牛タン定食を再現したいと塾長と話し、メニューを浅漬けとテールスープにして、定食を再現したのです。そこで、参考にしたのが、『ねぎし』という東京を中心に展開している牛タン専門店でした。

すると、仙台からの出張から戻って、月曜日に保育園に行くと、副園長と塾頭がある話をしていました。何の話かというと、毎週木曜日にテレビ東京で放送されている『カンブリア宮殿』についてです。詳しく話を聞くと、その回で取り上げられたのが、まさに『ねぎしフードサービス』だったのです。そして、塾頭や副園長が感動したのが、その経営方針や社長の考え方で、それが見守る保育やチーム保育に通じるものがあると言うのです。

そこで、テレビ東京の番組をオンデマンドで視聴できるサービスがあるので、それに塾長が登録して、今回の臥竜塾で観ようということになりました。

これを観終わって思ったのですが、ちょうど新宿せいがでも、チームワークと言いますか、人間関係のところで、悩んでいるところでした。今回のカンブリア宮殿で、ねぎしを取り上げたこともそうですが、それを塾頭がたまたま観ていて、それがチーム保育に通じると感じ、臥竜塾で観る。まさに、今悩んでいるところに、それの解決とは言いませんが、ヒントになるような情報がたまたま入ってくるという、この偶然に感動しました。それが、また仙台で牛タンを食べ、ねぎしのような定食を再現しようという今回の臥竜塾のタイミングでまた起きたことに、さらに興奮してしまいました。(笑)

では、その内容について、少し紹介しようと思います。

ねぎし独自の経営術には、おおきく3つのポイントがあります。まず1つめが、「親切」です。根岸社長は、親切こそが、究極の企業戦略であり、ねぎし最大の商品であるとおっしゃっています。外食産業であるため、独自性のある商品でおいしく出すのは当たり前だが、それは、五十歩百歩で周りが迫ってきます。そうなると、結局最後は、『人』だとおっしゃいます。それはどういうことかと言うと、答えはねぎしのお客の声にありました。ねぎしのリピーターは、気配り、心配りが、他のお店と違うと言います。たとえば、お客が薬を取り出せば、即座に水が運ばれたり、女性客のおかわりには、あえて声を出さなかったりというような気配りが見られます。このように、親切を提供することで、ねぎしは、価格競争とは無縁の独自の集客を続けていきました。激安ランチが多くあるなか、ランチの平均客単価1200円以上でも、連日大行列ができているのは、そこに秘密があったのです。

その裏には、店員が、お客の動きを見逃さない立ち位置を事前に打ち合わせし、こういったことに即座に対応できるようにしっかり準備をしています。その打ち合わせの様子で、「フォロー」という言葉がよく出てきました。この「フォロー」というのは、去年新宿せいがに就職し、せいがのチームワークを見てきて、1番感じたものです。ベテランが、新人職員に指導するのではなく、新人職員の個性を尊重し、やり方も任せる。そして、失敗しても怒るのではなく、そっとフォローしてくれえる。そして、ベテランの先生方の距離感も、すぐにフォローできる距離感にいつもいてくれるため、新人職員は安心して、のびのびとやれるのです。この辺りに、ねぎしとの共通点を感じます。

根岸社長が、「親切」を企業戦略とした背景には、社長に苦い過去がありました。それが、2つめのポイントです。根岸社長が30代の頃、仙台を中心に、東京でヒットしている業態を地方に持ってきて開業するというスタイルで外食を展開していました。あるとき、そのお店に行くと、お店が開いておらず、従業員も誰1人来ていなかったそうです。すると、近くに同じような業態のお店がオープンしており、そこに従業員全員がヘッドハンティングされていたのです。ショックで1か月仕事ができなかったそうですが、自分が悪いんだと感じたそうです。短期的な利益を求めても、結局は現場の人材力がなければお店は永続しないと気づいた根岸社長は、従業員が、自分たちで考え、自分たちのために働くお店にしようという考えに至りました。そのため、ねぎしは、今年で創業34年目を迎えますが、総店舗数が34店舗、つまり1年に1店舗のペースでしか、出店していません。1年間でしっかり人材を育ててから、出店をするという根岸社長の考えに基づいています。お店では、店長を中心に店舗を「我が事」として参加し、いい店を作りたいと思います。その過程にチームワークが生まれ、いい店ができるとおっしゃいます。

この「我が事」として働くという言葉がいいですね。上からのトップダウンではなく、従業員それぞれが考え、動くというやり方です。責任も重いですが、やりがいが圧倒的に違うと従業員が言います。

最後の3つめのポイントが、現場が会社の仕組みを作り、経営方針を決める会社であることです。ねぎしの経営の本質を表しているのが、本社の場所です。ねぎしの本社は、質素な雑居ビルのワンフロアだけです。社長室も机と椅子だけが入る大きさで、部屋ではなく、パーテーションで仕切られているだけでした。実はねぎしは、本社のことを「サポートオフィス」と呼び、店を支援するためだけの存在と位置づけています。

2つめのポイントにも関わってきますが、ねぎしでは、現場スタッフのアイデアにより、運営の全ての仕組みを作り上げ、店長を中心に、毎年の目標や経営方針を決定しています。たとえば、清潔さを保つプロジェクトでは、本部のマネージャーが監督するのではなく、店長同士がチェックし評価します。また、人材教育に関する効果のあるやり方が考案されれば、運営規則を変更し、全店舗に導入するといいます。

このように、プランから参加することで、「我が事」なります。自分で判断し、実行することで文句の言いようがありません。その中のどこかで必ず「成長してるな」と感じます。そうなれば、人はどんどん変わり、意欲的になっていくと根岸社長はおっしゃいます。すると、定着率も良くなります。しかし、それにはやはり時間がかかります。だから、1年に1店舗というのも納得ですね。

これが、ねぎしの経営術のポイントです。カンブリア宮殿では、最後に番組MCである村上龍さんが、編集後記を読んでいます。そこには、こう書かれています。

 

外食産業は岐路に立っている。消費者は舌が肥えていて、移り気だ。「ねぎしフードサービス」は、従業員の意識改革、やらされ感の改善に取り組むことで、確かな地位を獲得した。モチベーションの向上が必須、などと簡単に言うが、これほどむずかしいことはない。根岸さんは「店長への決定権委譲」など、システムを作り上げた。そのシステムは「信頼」がベースになっている。人と人の信頼は、育むのに長い時間がかかる。また、自らを信頼していないと、他人への信頼も生まれない。人は、案外、脆いものだ。信頼だけが、その脆さを補う。

 

やらされ感の改善、モチベーションの向上は、外食産業に限らず、色んな職場においての課題だと思います。これを根岸社長は、上からのトップダウンではなく、現場主体にすることで改善しました。見守る保育におけるチーム保育では、元々現場主体で、みんなが高いモチベーションを持って仕事ができる環境が整っているように思います。そして、保育士も阿吽の呼吸で連携をとり、絶妙な距離感で子どもと接しています。また、新人は先輩のフォロー力を目の当たりにすることで、ベテランに対して信頼感が生まれ、それを自分がベテランになったときには、新人にできるようになります。ねぎしも見守る保育も信頼がとても大切だということを改めて認識しました。

 

最後に、メニューの紹介ですが、今回はねぎしセットの再現です。

こちらがねぎしセット。

ねぎしセット

 

そして、こちらが今回のメニューです。

 

 

配置もねぎしセットを意識しています。

デザートは、暑くなってきたので、かき氷です。塾長のかき氷機で、氷を削り、シロップと練乳をかけています。

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以上、色んな偶然が重なり、ねぎし三昧となった臥竜塾でした。

西村宗玲

牛タンが招いた偶然」への4件のフィードバック

  1. なんとそのような偶然があったのですね!仙台の牛タンという所で「おやおやこれは」と思ったのですが、その牛タン定食の再現に参考にしたのがねぎしのというのも読んで「わーお!」と私も思ってしまいました。まさにドンピシャな偶然ですね。カンブリア宮殿のねぎしの回、早速見させていただきました!ありがとうございます!「信頼」がベースというのは素晴らしいですね。会社が社員のことを信頼しているからこそ、様々な決定権を委ねられるのでしょうし、それが「我が事」に繋がっていきますね。信頼されれば、やはり人はその相手のことを信頼しようと思うのだと思います。そのためには、まず自分が相手を信頼するということが大切ですね。見守る保育のチーム保育、新宿せいがの様子を知るとやはり職員を信頼する藤森先生や様々な先生の姿を感じます。そんな関係性がいいチームを作りあげていくのかもしれませんね。信頼する、任せてみるそんな人を信じる姿勢で子どもにも大人にも関わっていきたいなと思いました。

  2. 根岸氏の「結局最後は人」という部分に、人工知能などの問題で不安が生まれている現代を勇気づける、そのような力があるようにも感じました。また、塾頭が感動したと言っていた「人は、案外、脆いものだ。信頼だけが、その脆さを補う。」という言葉が、頭を離れません。人は自分の脆さを必死に隠そうとします。だから、見えにくいのだと思います。その脆さを自ら他者に伝えられた時、信頼は厚みを増すのだと感じています。周囲の事象を「我が事」として捉えていきたいです。

  3. 今回の根岸氏の考え方゛親切゛という形からヒトがヒトとつながりをもつキッカケだと思いました。
    そして、言葉の中に、「人から始まり、人で終わる」とあり、ヒトが様々な面へ関わりを持ち、多様な人々と関わりを持ち広げていく、そこから信頼が生まれ、つながりができると思います。
    また、上からのトップダウンではなく、現場に自発性が生まれ、個性が生きるようにも感じています。
    余談ですが、定食もぜひ、食べてみたいです。

  4.  西村先生の偶然好き、いいですね。これは6月のブログなので、この後、確か偶然と表現されずに〝縁〟と表現されるようになっていかれたかと思います。この短期間の間に、色々な出逢いや、色々な学びが、言葉を変え、西村先生を成長させていっているのだなぁと感じました。
     〝親切〟〝我が事〟、共にとても心に残っている言葉です。実際にこの後の臥竜塾で食べに行きますが、とても親切なお店の雰囲気が印象的でした。おかわりを〝日本昔話盛りで〟〝3分の1だけ下さい〟(笑)という注文にも当たり前のように応えてくれたことが、物語っていたように思いました。

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