文字(アドバイス)

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私が、以前シュタイナー教育を学ぶために、小学校1年生になって授業を経験するというものがありました。その中で国語の授業で、文字を学ぶというものがありましたが、日本では、それを書き方ノートに濃い、柔らかい芯の鉛筆である「かきかた鉛筆」を使います。それを使って、まず、ひらがなが点線で書かれている上をなぞるという事から始まります。

シュタイナー教育の体験をしたときは、クレヨンを使って文字を書きます。その時に、「K」という字を習うときに、Kの文字を王様(キング)が杖を持っている絵にして、「K」の文字を印象付けていきます。それは、文字なのか、絵画なのか、はっきり区別がつかない活動です。それは、シュタイナー教育では、イタリアのレッジオ同様、教育を芸術行為と位置付けます。それは、芸術には、日常と精神を調和的に結びつける力があると考えるからです。子どもは、芸術的なものに触れると、人の感情は高まり、感覚が対象に集中するからです。喜怒哀楽の感情とともに取り入れた知識は鮮明に記憶することができると考えるからです。そして、知識を芸術行為によって伝えることで、頭だけではなく、心や体も含む全体に働きかけることができると考えるからです。

ただ、この捉え方は、私の個人的な見解でもありますので、本当のシュタイナー教育とは違うところもあるかもしれませんが、どのような考え方を日本でも参考にするべきかという観点から考えたものです。

シュタイナー教育では、他にも、教科を芸術的に教えます。例えば、水彩画やフォルメン、教師の描く黒板絵を子どもたちが丹念にノートに写し取ることも芸術行為ですし、体を動かすこと、算数に木の実などを使ったり、自然素材を使って自分の手で教材を作ることもあります。その考え方から、1年生のエポックで、初めての文字導入では、1日目、クレヨンでノートを青く塗り、2日目に真ん中に小さい黄色を塗り、日を追うに従ってその黄色が大きく放射状になり、3日間かけて「光」という漢字を学びます。机上で字面を追いながら記憶するのではなく、喜びと感動をもって体験していく学びです。

また、アルファベットを覚えるときにはまず絵を描きます。ノートや画用紙などの1ページいっぱいにアルファベットをふくんだ絵を描き、次に少し抽象化された絵にし、この絵から抽象化されたアルファベットをまたページいっぱいに描いていきます。このようにして1つのアルファベットを覚えていきます。「A」をただ「A」としておぼえるのでは、なぜこの文字を作ったのか、どうやってこの文字が成り立ったのかを知りながら覚えるのと大きく異なります。ただ「A」を「A」として覚えただけでは決まり事や約束事を覚えることとなんら変わらなくなってしまうからです。発音し、絵を描いて、自分で文字にしていくことで、昔人間が「文字」というものを必要として、作りだしたのだという一連の流れを子どもたちに感じさせていきます。(藤森)

文字(アドバイス)」への2件のフィードバック

  1. 教育を芸術行為と位置付ける、芸術は日常と精神を調和的に結びつけるとありました。どういう意味だろうと考えて、見当違いかもしれませんが、感覚や体をつかうことの大切さのようなものを感じました。芸術という実際に触れることで具体的なものがより自分の中に入っていき、抽象的なものを理解していくそんなプロセスなのでしょうか。この言葉の意味を実際の子どもたちを見て、いろいろと保育を工夫していきながら、しっかり理解したいなと思いました。光を3日間かけて学んでいくという丁寧な教育には驚きました。抽象的なことをただ覚えこませるだけでは出来ているように見えるだけで本当の理解にはなっていませんね。抽象的なことをいかに具体的な方法で理解してもらえるようにするのか丁寧にやっていきたいなと思いました。学生の頃に知識だけで生意気だった自分が働き出して実際を経験することで知ったことがたくさんあります。これからもそんな積み重ねですが、その実際を経験して知るという学びを保育の場でも実践していきたいなと思います。

  2.  〝それは、文字なのか、絵画なのか、はっきり区別がつかない活動です。それは、シュタイナー教育では、イタリアのレッジオ同様、教育を芸術行為と位置付けます。〟素晴らしいと思いました。文字も、よく見ると、とてもきれいな形をしています。文字を文字として捉えている頭を、子ども達はもっと柔軟な発想で見て、捉えているようです。まるでデザインの世界のような話ですね。文字を考える上で、とても大切な考え方に触れることができたように思いました。

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