あけましておめでとうございます。
新年1発目の塾は、人体についての勉強です。
テーマ『腸』
現在NHKで放送されている、NHKスペシャル『人体−神秘の巨大ネットワーク』という番組をみんなで観ました。
腸と言えば、今大注目なのが「腸内フローラ(腸内細菌)」ですね。ダイエットや美肌、肥満解消など、腸内細菌が体に良い効果を生み出していると話題です。細菌を手懐けている、とても珍しい臓器が「腸」なのです。まさに、人体の中の「独立国家」と言えるでしょう。
その腸が、私達の命に関わる意外な役割を果たしていることが最近明らかになったそうです。それは、免疫力を司るという大仕事です。この時期になると、インフルエンザが流行ってきます。今年は特にインフルエンザの患者数が多いそうですね。そのようなインフルエンザや食中毒など、あらゆる病気から、私達を守る大事な力が免疫力です。その働きがおかしくなると、花粉症や喘息などのアレルギーやリウマチなどの病気を引き起こすことになります。
そんな大事な免疫力を保つために腸が利用しているのが、腸内細菌と免疫細胞なのです。腸は水戸黄門の助さんと格さんのように、腸内細菌と免疫細胞を従えて全身の免疫力をコントロールしていることが分かってきたそうです。番組の中でも、ある研究者がおっしゃっていましたが、「腸は免疫力の源」です。
今回、番組のゲストで、ニューヨークヤンキースの田中将大投手が出演されていました。普段の生活で腸を意識することはありますか?という質問に、食当たりの経験もなく、大人になるにつれて体を壊すことも少なくなったとおっしゃっていました。すると、解説の山中教授が一言「超一流のスポーツ選手は、腸も一流」
実際に番組を観ていると、クスッと笑うのですが、文字に起こしてみると、面白さが半減しますね(笑)
では、皆さんは腸についてどのくらいご存知でしょうか。簡単な情報を見てみましょう。
成人の平均的な腸の長さは、約8.5m
それを広げてみると
およそ32㎡!!これは畳20畳分の広さだそうです。
これだけ大きな臓器が人の体の中には収納されているのですね。
実際には、腸の表面は絨毛というひだ状になっています。それを広げるのでこれだけの広さになるそうです。
写真で見るとイソギンチャクのような形をしています。腸(超)すごいですね!
この腸を毎日通るのが、私たちが摂取した食事です。腸は食事から大量に栄養や水分を吸収しています。しかし、食べ物以外にも病原菌やウイルスが一緒に入ってくることもあります。つまり、腸は体の中でもっとも外敵にさらされやすい場所でもあります。しかし安心ください。腸にはその外敵を抑える仕組みがちゃんとあります。そうですよね。その外敵に負けていたら、人間ここまで遺伝子を繋いできていませんよね。
では、一体何が人間の免疫力を高めるのでしょうか。その答えは、腸内のミクロの世界にあるそうです。腸内の表面は透明な粘液で覆われています。さらに拡大すると、びっしりとたくさんの突起が並んでいました。これが絨毛です。絨毛の中には毛細血管があり、食べ物などの栄養は、この絨毛で吸収され、血液で全身に運ばれるのです。この腸の表面付近に住んでいるのが、先ほども書いた腸が従える助さん(腸内最近)と格さん(免疫細胞)です。腸の表面を覆う粘液には、大量の腸内最近がいます。その数100兆個。100腸個です!(笑)では、免疫細胞はどこにいるのでしょう。それは、絨毛の突起の中にいました。つまり、腸の壁の中にあるのです。免疫細胞の仕事は、病原菌やウイルスなどの外敵を攻撃し排除することです。この免疫細胞ですが、全身でみると、およそ2兆個あるそうです。そして、なんとそのうちの約7割を腸に配備していると言います。腸は、外敵の侵入から人体を守る門番と言っても過言ではありません。だからこそ、腸に大量の免疫細胞を集結させ、体を病気から守っているのです。腸の中では、どのようにして病気から体を守っているのでしょう。
腸に病原菌・ウイルスが侵入した際、その異変を察知した免疫細胞が、攻撃するように攻撃メッセージを伝える物質を放出します。腸の壁の細胞がそれを受け取り、腸の壁は殺菌物質を放出します。これで外敵の侵入を防いでいますが、腸の仕事はこれだけではありません。なんと、全身の免疫力を高めるために、免疫細胞を「訓練」するという重要な役割を果たしていることもわかりました。そして、そのための訓練場まで完備しているそうです。
その訓練の方法もすごいんです。腸の中に、隙を作ります。そこから腸内細菌を敢えて取り込み、中にいる免疫細胞に出会わせます。そこで、敵か敵ではないかを学ばせるのです。こうして、免疫細胞は様々な病気と戦う能力が高められます。その活躍の場は、腸に留まらず、血液の流れに乗り、身体中に運ばれます。こうして全身の至るところで、病原菌と戦う戦士となるのです。腸と免疫の関係というのは、現在の研究者の間では、とてもホットなテーマだそうです。
腸の重要性も見てきましたが、同時に厄介な問題もあると言います。免疫というのは、外から入ってきた細菌やウイルスをやっつけるというのが役割ですが、それが暴走してしまうと、アレルギーや自分自身の細胞を攻撃してしまって起こる病気になったりします。そして、これらの病気が最近増えています。その陰には、腸の異常があるのではないかと、山中教授はおっしゃいます。
免疫が暴走すると、仲間の免疫細胞を異常に興奮させ、敵ではないものまで攻撃させてしまいます。その症状に悩まされている海外の患者さんが出演されました。何が、免疫の暴走を招いているのか、今回専門家が行ったある調査で、その患者さんの腸に異常があることが分かりました。その調査は、検便です。便を調べると、腸内細菌の種類や数が分かります。その結果、健康な人と比べて、いくつかの腸内細菌が明らかに少なっていました。また、暴走した免疫細胞が脳に入った場合、脳を攻撃するようになります。
番組の中では、多発性硬化症の患者さんと、重度のアレルギーの患者さんが取り上げられていました。全く関係のない病気のようですが、2人の患者の便を調べると、どちらも共通してある特定の腸内細菌の減少が見られたそうです。
先ほど、腸内細菌がいくついるのかを記述しましたが、100腸個の腸内細菌が腸の中にはいます。その種類は約1000種類。代表的な細菌の1つがビフィズス菌です。腸の調子を整える善玉菌ですね。その一方で、免疫の暴走が起きていた患者さんのような病気の方の腸では、聞きなれない腸内細菌がいくつか少なくなっていました。2つの病気に共通して少なくなっていたのが、「クロストリジウム菌」という腸内細菌です。現在、研究者の間で大注目の腸内細菌だそうです。また大変なのが、このクロストリジウム菌だけで100種類くらいあり、中には病気の原因になる菌もあれば、免疫を制御する重要な役割を果たしている菌もいる。この中の特定の種類の菌が少ないと、重度のアレルギーなどを引き起こすことになったりする。
では、なぜクロストリジウム菌が少ないと、免疫が暴走するのか。謎を解く鍵が免疫研究の免疫研究の世界的権威、坂口先生によって発見されました。外敵を攻撃するのが仕事と思われていた免疫細胞の中に、全く違う役割を持つ特別なものがいることを見つけたのです。この発見はノーベル賞級だと言われており、世界中の研究者が驚きました。この坂口さんが見つけ出した、新たな免疫細胞は「Tレグ」と名づけられます。
このTレグ、体の中で暴走している免疫細胞を見つけると、驚くべき働きをします。なんと、興奮を静める物質を放出して暴走を抑える働きをします、まさに、演繹のブレーキ役と言っていいでしょう。そんな重要なTレグが私たちの腸で生み出されていることが最新研究で明らかになりました。しかも、免疫の暴走と関係していたクロストリジウム菌の働きが鍵を握っているというのです。腸の中ではどんなことが起きているのでしょうか。
腸の中でクロストリジウム菌は、食べ物のカケラに噛り付いて盛んに、メッセージ物質を放出しています。そのメッセージは、落ち着くように仕向けるものです。このメッセージ物質は、腸の壁の中に入って行き、免疫細胞に伝わります。それを受け取った免疫細胞は、形を変えてTレグ細胞へと変化します。これがTレグ細胞の誕生のプロセスです。こうして生まれたTレグ細胞は、訓練された免疫細胞と一緒に血液によって全身へ広がって行きます。そして、たどり着いた先で、暴走している免疫細胞を見つけると、その異常な興奮を鎮め、暴走を抑えます。全身の免疫本部である腸の役割は、免疫力を高めるだけではなく、ブレーキ役も生み出し、全身の免疫力を程よくコントロールする役割も担っているのです。つまり、アレルギー症状の重い人は、Tレグを増やすクロストリジウム菌が少ないために、免疫疾患が起こるという考えが今注目されています。
私たちの免疫というのは、攻撃役とブレーキ役のバランスがとても巧妙にできています。何事も「バランス」ですね。仏教に通じるものがあるように感じます。なぜ、突然仏教の話を出したかというと、このクロストリジウム菌を増やすためのヒントが意外な場所にあったからです。それが、神奈川県にある曹洞宗の大本山総持寺です。ここで修行生活を送る修行僧に、アレルギーが改善したという人が続出しているのです。花粉症のある人、アトピーのある人が、ほとんど気にならなくなったと言います。修行僧の腸で一体何が起きているのでしょう。便による腸内細菌検査を調べたところ、その結果、大注目のクロストリジウム菌が備わっていることが分かりました。修行生活の中に、何かクロストリジウム菌にとって良いことがあるのでしょうか。研究者が注目したのは、修行僧が毎日食べている精進料理です。食材にたくさん含まれる食物繊維が鍵を握っていると言うのです。実は、最新の研究で、食物繊維の意外な働きが突き止められました。腸内にクロストリジウム菌の多いマウスに食物繊維たっぷりの餌を与え続けると、Tレグの割合がぐんと増えました。同じくクロストリジウム菌の多いマウスに、食物繊維の少ないエサを与え続けると、あまりTレグが増えませんでした。つまり、クロストリジウム菌は、大好物の食物繊維を摂ることで、初めてTレグを生み出すことができるのです。
この食物繊維ですが、私たち日本人ととても深いつながりがあります。はるか昔から食べられていた、きのこや木の実に始まり、その後も穀物、根菜、海藻類など日本の食材は常に食物繊維がたくさん含まれています。そのため、長い年月の間に、日本人の腸にはクロストリジウム菌など食物繊維を好む腸内細菌が多く住み着くようになったと考えられています。最近の研究発表では、そんな日本人の腸内細菌が優れたパワーを持つことが明らかになりました。調べたのは、腸内細菌が免疫力をコントロールする物質を出す能力です。欧米などの他の11カ国と日本の健康な人で比べると、約4倍近くその物質を出す能力が高いのです。日本人の腸内細菌は免疫力をコントロールする能力が群を抜いています。長い間、食物繊維をたっぷり摂り続けてきた日本人には、誰にでも鉄壁の免疫力を生む「腸能力」が備わっていたのです。
ところが、現代の日本では、アレルギーなど免疫の暴走による病が増え続けています。腸の中で、長い時間をかけて育まれてきた腸内細菌と免疫細胞の関係が、急速な食の変化により、乱されているのではないかと考えられ始めています。これまでアレルギーというと、皮膚や呼吸器だけで起こる問題だと思われていましたが、腸も関わっている可能性が強く示されています。腸内細菌との共生は、簡単にできることではなく、人類の進化の過程でだんだん身につけた能力なのです。それを、この数十年で突然環境が変わったり、食べ物が変わったりすることで、腸内細菌も驚き、暴走しているのではないかと山中教授は指摘します。現代の生活の中でも、食物繊維は摂取できます。アレルギーの少ない修行僧は、1日平均20グラムの食物繊維を摂取しています。もちろん、食物繊維だけを摂るのも良くありません。それも「バランス」ですね。
2018年、健康的なテーマでスタートしました。わたし自身の食事を振り返っても、やはり食物繊維が少ないように感じます。バランスの良い食事を心がけていこうと思います。では、そんな今回の塾の食事は、どうだったのでしょうか。
私の長崎土産「島原うどん」
田崎先生の長崎土産「雲仙ウインナー」
高騰している野菜もしっかり摂ります「ニバニラ炒め」
レバーで鉄分もたっぷり。
新年1発目なので、「お屠蘇」
今年もよろしくお願いします!!
西村 宗玲