夕方に吹く風もだいぶ秋らしくなってきましたが、それでもまだ夏は、いや暑さは終わらないかなという感じですね。
そんな中、新宿せいが保育園にも夏の風物詩であるカブトムシやクワガタムシが飼育されています。
今回はそんなカブトムシに関する報告です。
カブトムシやクワガタムシは子どもたちには人気の昆虫ですね。ですので、やっぱり触ってみたくなりますし、カブトムシ同士を向き合わせて戦わせてみたくなります。私も子どもの頃にそういったことはよくやりました。しかし、どうも子どもたちのカブトムシへの関わり方がカブトムシを「おもちゃ」のように扱っているような姿がよく見られるようになったそうです。カブトムシも昆虫界では王者かもしれませんが、何度も触られたり、時には乱暴にされてしまうことで、やはりストレスもかかるので、弱ってしまいます。そんな子どもたちの様子を見ていた先生から「どうしたらいいのか」と塾長に相談がありました。
そこで塾長から「カブトムシをおもちゃとして見る」のではなく、様々な実験を通して、「観察対象として見る」ことができればいいのではないかということになり、実験を行ってみればいいのではないかということになりました。
ということもあり、早速、「カブトムシ実験」を子どもたちと行ってみました。
私が白衣を着て、実験のセッティングをしていると何かが始まると子どもたちも感じたようで、興味のある子達が集まってきました。子ども達が机を囲むくらい集まってくれたので、実験開始です。
まずは「カブトムシの引っぱる力を調べよう」ということで、糸をつけた小さな箱をカブトムシの角の部分にひっかけ、どれくらい重いものを運ぶことができるのか実験してみました。
今回は重りに50円玉を使ってみることにしました。まずは50円玉1枚からスタートして、どんどん枚数を増やしていきます。50円玉の重りが入った箱を引っぱるカブトムシの姿に子どもたちからも自然と「すげー」という声が聞かれたり、「ガンバレー」と応援する声もありました。結果として一匹目のカブトムシは50円玉を5枚運ぶことができました。
次は違うカブトムシで試してみることにしました。
結果としては、二匹目のカブトムシは50円玉を1枚しか運ぶことができませんでした。
そんなカブトムシを見て、子どもたちがあることに気がつきました。
まず、ある子が言ったのは「新聞紙の上だとツルツルするから(うまく運べない)じゃない?」ということでした。
そういった声があったので、厚紙の上やクリアファイルの上で実験してみることにしました。結果は同じではあったのですが、「こうじゃない?」「こうしてみたらいいんじゃない?」と試してみることそのことがまさに「科学する」ことですね。結果は関係ありませんね。
他に「なんだか動きが変」という声もあがりました。そうなのです。実はカブトムシの足のいくつかが短くなってしまっていたのです。カブトムシ同士の争いで失われたのかもしれません。または、もしかすると子ども達が触っている時にとれてしまったのかもしれません。その時に私は「本当だ。かわいそうだね。触りすぎちゃったからかな。優しく触ってあげてね」と声をかけました。
どんなことを子どもたちが思ったのかは分かりませんが、実験を通して、カブトムシをよく観察したことでカブトムシの変化に気づいていたことは間違いありませんね。
また、保育所保育指針の【情緒の安定】の内容に「一人一人の子どもの置かれている状態や発達過程などを的確に把握し、子どもの欲求を適切に満たしながら、応答的な触れ合いや言葉がけを行う」とあります。カブトムシを見ると触ってみたくなるというのは子どもにとって自然な欲求ですね。塾長はよく、「物を壊してしまう子には壊してもいいも物を用意すればいいのです」や「走り回っている子がいたらな、走ってもいい環境を用意すればいいのです」ということを言われます。私たち保育者の専門性は子どもたちの欲求を適切に満たせる環境を構成することでもあるのかもしれません。そんなことを改めて感じました。
もう一つ「ある実験」をしました。私自身も予想外の実験結果になり、おもしろかったのですが、少し長くなってしまったので次回、また報告させていただこうと思います!
(報告者 森口達也)
実験を始める動機が素晴らしいですね。そしてその意図が子どもたちに伝わるのか、もしくは子どもの心根にもつ優しさがカブトムシの変化に気付かさせるのか、実験は大成功でしたね。このような実践を楽しく積み上げていきたいものです。